バイオマス発電でも地域を『共存共栄』で岸田首相は、新しい日本をつくる上で、『成長と分配の好循環』と『コロナ後の新しい社会の開拓』とのコンセプトを掲げる。
具体的には、デジタル化、グリーン化政策を進めていく際に、首相は「この改革は地方から起こります」と強調。
高齢化や過疎化の社会課題に直面している今、例えば自動走行による介護先への送迎サービスや物の配達の自動化なども、都会に比べ交通手段の少ない地方が先行するという首相の判断。
再生可能エネルギー開拓も同様で、自然豊かな地方の資源の活用が新しい産業・サービスや雇用を創出する。
秋田・由利本荘市沖洋上風力開発で、レノバは秋田県漁業協同組合や由利本荘市など地方自治体の関係者とこれまで濃密な対話と協議を重ねてきている。
地方の漁業をはじめ林業、農業などの関係者との「共存共栄なくして再生可能エネルギーは成り立たない」と木南氏は語る。
すでに、同社は2016年7月から秋田県内でバイオマス発電を行っている。その秋田バイオマス発電所(本社・秋田市)の発電容量は20・5㍋㍗で、年間発電量は1億3000万㌔㍗時(3万世帯分)にのぼる。
燃料のチップには、全使用量の7割(年間15万㌧)を地元の秋田杉未利用材で賄うなど、地域の林業との共存共栄を実践。
「われわれの発電所1個につき、7つのチップ工場ができています。つまり7つの林業社さんが秋田県内の全域にあり、間伐材を乾かし、チップにしている。チップ工場への設備投資は林野庁も補助金を出されるなど、国からの支援もいただいています」
日本は国土の3分の2を森林におおわれながら、戦後、森林の整備はほったらかしにされてきたのが現状。建築資材としての木材はカナダなどからの輸入で大半を賄うという状況が長い間続いてきた。
木材市況は今、世界的に高騰が続く。木材の自給率向上へ向け、林業支援にもつながるバイオマス発電だ。
レノバは千葉県いすみ市沖でも、洋上風力発電の構想を温めている。日本のエネルギー自給率は7%前後とされ、非常に低い。その意味で再生エネ事業を推進する社会的意義は大きい。
「そのためにも、第1ラウンドで誰がやろうが、やはり良いモデルをつくらないと。地元の漁師さん方から、お前たちを信じて良かったとか、お前たちが来る前よりも、来た後のほうが、収入も増え、息子も跡を継いでくれたと。こういう状況をつくらないと駄目だと思っています」
メンテナンス(保守・修繕)も含めて、地元の人たちにスキルを伝えるなどの共存共栄を進めたいとする木南氏。
木南陽介・レノバ社長『未踏峰』に挑戦 風力発電に使う風車など最終製品は世界で寡占化が進む。
「洋上風車というと、大きな世界シェアはやはり欧州勢が握っているんです。シーメンス(ドイツ)、ヴェスタス(デンマーク)という巨頭がいて、このほか米国にはGEがいて、中国にも2社大きいところがある。今から、日本がそうした最終製品をつくるのは結構難しいと」
木南氏はこう現状を述べながらも、「しかし、タービンの一部だとか、ギアボックス(増速機)に使う軸受けだとか、それからブレード(回転翼)は実は炭素繊維活用の可能性があって、これは日本が強いんです」と強調。
日本の産業の潜在力の掘り起こし、そして地域との共生による地域振興がかかる再生可能エネルギーへの取り組み。
未踏峰に挑戦─。学生時代は登山にも熱中した木南氏。自然と共生できるエネルギー事業
に挑戦し続ける覚悟だ。
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