2021-11-08

【政界】総裁選、衆院選で変化した自民党内の力学 岸田首相に“意外としたたか”との評価も

イラスト・山田紳

※2021年11月2日時点

世代交代が加速──。岸田文雄は首相就任の10日後に衆院を解散し、10月31日投開票という異例の短期決戦で衆院選に臨んだ。新型コロナウイルス対策などを盛り込んだ2021年度補正予算案を早期に編成し、年内に成立させるのが狙いだ。ただ、9月の自民党総裁選を経て党内力学は変化し、前政権までと比べて「党高政低」の傾向が強まっている。岸田が政権を安定軌道に乗せるには、慎重なかじ取りが必要だ。

公約に高市色

「高市はやり過ぎだ。そのうち問題になるだろう」。衆院解散の前日、総裁選で岸田を支持した閣僚経験者は、出来上がったばかりの自民党の公約を見ながらため息をついた。

 公約作りを主導したのは政調会長の高市早苗。総裁選で元首相・安倍晋三の全面支援を受け、決選投票には進めなかったものの、予想を上回る188票を集めて存在感を示した。次の総裁選に向けて足場を固めたと言っていい。

 その高市が急ピッチでまとめた公約案には、自身が総裁選で訴えた政策が随所に並んだ。例えば、高市が提唱した「大胆な危機管理投資」を経済分野の小見出しに採用。クリーンエネルギー投資の一環として「SMR(小型モジュール炉)の地下立地」も明記した。一方、首相が掲げた「令和版所得倍増計画」はどこにもなく、保守派の高市が反対する選択的夫婦別姓制度は書きぶりが後退した。

 これでは元閣僚が嘆くのももっともだ。ただ、高市が独断専行したわけではない。10月7日に首相官邸で岸田に原案を説明し、了承を得ている。当日の高市の記者団への説明が秀逸だった。「岸田総裁の主張を精いっぱい生かしながら、これまで党で積み上げてきた政策もあるので苦労して作った。でも自信作だ」。総裁の考えといえども無条件に公約になるわけではないという強い自負がにじむ。

 高市側の中堅議員は、高市への風当たりの強さに「官邸は岸田カラーを出したがったが、岸田さんは『党の意見を聞く』というスタンス。苦労したのはこっちの方だ」と反論する。

 一口に自民党支持層といっても政治意識はさまざまだ。コアな保守層に訴求力のある高市の主張を公約に取り入れたのは、穏健派の岸田とバランスをとる選挙戦術でもあったのだろう。それにしても岸田の物分かりのよさには一抹の不安が残る。

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