2021-11-16

売上高目標10兆円!【大和ハウス ・芳井敬一】がポートフォリオの基軸に据える『まちの再耕』

大和ハウス工業社長 芳井敬一

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物流施設、データセンター作りが収益源に成長

 同社は1955年(昭和30年)、住宅の戸建てや集合住宅などのハウスメーカーとして出発。

 敗戦から10年、高度成長のトバ口に立っていた日本国内にあって、マイホームを建てたいという人々の夢をかなえるため、創業者・石橋信夫氏(1921―2003)はプレハブ住宅を考案した。「建築の工業化」という発想である。プレハブ(prefabrication、事前に建築部材を作っておく)工法により、コストを引き下げ、手ごろな住宅価格でマイホームを購入者に届けようという考えであった。

 今や、事業領域は、住宅、賃貸住宅、マンションなどの住関連だけでなく、流通店舗やデータセンターづくり、それに再生可能エネルギーや介護事業などへと広がる。

 例えば、流通事業本部の関連で見ると、2017年、『ユニクロ』のファーストリテイリングが東京・有明に開設した『有明オフィス』の建築も大和ハウスが手がけている。

 製造小売り(SPA)の手法で大きく成長したファーストリテイリングはデジタル革命に対応し、〝情報製造小売業〟への道でアパレル業界の最先端を走る。

 有明オフィスは最先端のアパレル物流拠点であり、本社機能も兼ね備え、世界の『ユニクロ』の司令塔的機能を持つ。

 こうした物流施設デベロッパーとして、大和ハウスは国内トップという立ち位置にある。2022以降も、大型の物流施設の開発を毎年30 棟から50棟のペースで進める計画である。

 また、物流施設に続く成長センターになるのがデータセンターの開発だ。デジタルトランスフォーメーション(改革)が進む中、同社が手がけた『千葉ニュータウン』(千葉県印西市)に『千葉ニュータウンデータセンターパークプロジェクト』(仮称)を建設する計画。

 総延べ床面積は33万平方㍍(11万坪)と東京ドーム7個分のスケール。第5世代通信(5G)の普及で、データ通信量が飛躍的に伸びることから、それに対応しての巨大データセンターづくりである。

 こうした物流施設、データセンター事業は今、同社の大きな収益基盤となっている。

 このように、同社の事業領域は拡大、変化し、事業本部間で重複する事業も生まれてきた。

 その再編・整備を進め、その作業がコロナ危機下で加速したということである。

 2022年度から始まる第7次中期経営計画で、「ポートフォリオ(投資戦略)をある程度変えていく」と芳井氏は語る。

 例えば、関連事業本部には先述のように、大和リースや建設会社のフジタが入っているが、流通店舗事業本部や建築事業本部とも関連があり、「見直しを進め、再成長を図っていく」方針である。

『建設』機能を持ったデベロッパーに強み

 物流、流通店舗開発のデベロッパーとして、同社が存在感を増しているのは、同社が建設業の機能を持っていることにも起因する。

 それは戸建てや集合住宅、そしてマンション開発の際、自らの手で建設してきた知識やノウハウを生かせるということだ。

 国内の物流施設デベロッパーとして、大手不動産の三井不動産、三菱地所、野村不動産や、外資系の日本GLPなども競合するが、「建設業がデベロッパーをやっている」強みを発揮していく方針。

 創業から今日までの66年の歴史をたどると、創業者・石橋信夫氏が建設業と戸建て・集合住宅の融合で事業を興し、中興の祖・樋口武男氏が物流、流通、商業領域を拡大し、さらに環境エネや介護分野を開発。

 樋口氏(1938年=昭和13年生まれ)は、1963年(昭和38年)に入社し、直接、創業者の薫陶を受けた人物。

「社会が求めるものを世に送り出す」という経営理念の下、鉄パイプによる建築を発案し、『建築の工業化』に邁進した石橋氏。

 その後、1990年代後半、経営が低迷するが、その時に子会社の旧大和団地(当時、上場企業)の社長から本社に呼び戻されたのが樋口氏だ。本社顧問を経て、2001年(平成13年)、樋口氏は経営改革に乗り出し、建設会社のフジタをM&A(合併・買収)するなど、経営基盤の強化に注力。

 そして、グループ社員が、自分たちが手がける事業の方向性を認識しやすいように、『アスフカケツノ』(明日不可欠の)という標語も作った。

『ア』は安心・安全、『ス』はスピードとストック(資産)、『フ』は福祉、『カ』は環境、『ケ』は健康、『ツ』は通信、『ノ』は農業領域を指す。

 こうした事業構造で、国内の住宅建設業で東証に上場する企業34社の中で時価総額は1位(10月22日時点で約2兆4790億円)という立ち位置。

『建設』という括くくりで、大手ゼネコン4社の時価総額と比較しても、大和ハウスへの市場の評価は高い。

 ちなみに、大手ゼネコンの時価総額は大成建設約8162億円、鹿島約7591億円、大林組約6991億円、清水建設約6751億円である。

 建設業にプラス住宅・マンション、物流施設、データセンターづくりなどのデベロッパー業が付加価値として上乗せされているという強み。それを市場が評価している。

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本誌主幹 村田博文

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