2021-11-12

新政権の成長政策、 分配政策はどうあるべきか?竹森俊平氏に聞く

竹森俊平・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長



日本は平時から「司令塔」づくりを


 ─ 菅前政権はデジタル庁を設置しましたが、日本のデジタル化の課題をどう見ますか。

 竹森 今、足元ではワクチンの接種証明をデジタル化し、スマートフォンのアプリに入れるという話が出ています。

 しかし、接種証明には内閣府、デジタル庁、厚生労働省のもの、経済産業省、厚労省、海外渡航新型コロナウイルス検査センター(TeCOT)のもの、厚労省による入国者健康居所確認アプリの3つがあるんです。

 これらを統一しなければ、国際的に統合をしていく時に、海外から「日本は一体どことつなげればいいのか」と言われてしまいます。従来はデジタル庁で統合するという話になっていましたが、次の大臣がきちんと引き継いでくれるかが問題です。

 こういうことを見ても、政権の引き継ぎは非常に重要です。新しい方針を打ち出すことはもちろん大事ですが、前政権とつながるところはつながるということを、きちんと確認いただきたいと思います。

 これはワクチンを例にして申し上げましたが、こうした問題はあらゆるところにあります。デジタル化となったら、各省庁が予算を取って好きなようにやろうとしてしまう。これが日本のデジタル化の大きな問題です。

 ─ これは日本の体質と言っていいでしょうか。

 竹森 そうですね。コロナ禍で司令塔不在が言われましたが、危機時だけの問題ではなく、日常的に統合的な仕組みはできていなかったのだろうと思います。

 ─ 改めて「成長と分配」の分配を考える時に気を付けるべきことはなんでしょうか。

 竹森 今までも考えられてきたことですが、例えば「同一賃金同一労働」も企業収益をできる限り労働者に分配するという考え方です。同時に非正規雇用の方々が不当に低い賃金をもらっているとしたら、これを是正するというのも分配です。

 ただ、税の仕組みを変えて累進性を高くするということになると新しい次元に入ります。ここでマイナス面は出てこないか、政治的、国民的合意が得られるかということが問題になります。

 岸田首相は「聞く力」が高いと言われますが、政策でいずれの案かを選んだ時に、ご自身が決断をした経緯をきちんと国民に説明することが大事になってくると思います。

たけもり・しゅんぺい
1956年3月東京都生まれ。81年慶應義塾大学経済学部卒業、86年同大学院経済学研究科修了、同年同大学経済学部助手、89年ロチェスター大学(米国)経済学博士号取得、同年慶應義塾大学経済学部助教授、97年同大学経済学部教授、21年5月三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長に就任。

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