2021-11-12

【感染症対策のポイントとは?】日本医師会名誉会長が訴える「大きな方針は国が決め、都道府県が地域に合った対策を」

横倉義武・日本医師会名誉会長(弘恵会 ヨコクラ病院理事長)



地域連携は機能する

 ―― 足元では感染者数が落ち着き、感染対策と経済再生の両立がテーマになっています。

 横倉 はい。世界的にもコロナ対策が機能した地域ほど経済の回復が早いということが分かっています。国際的に比較すると、日本はコロナ感染者もそんなに多くないし、重症者の方も、亡くなられた方も非常に少ない。

 ということは、ある意味コロナの対策がうまく機能したということです。ですから、国民一人ひとりが感染予防をしようと、しっかり呼び掛けることをもっとすべきではないでしょうか。

 ―― 先ほど地域ごとの対応が大事だと指摘されていましたが、長野県の松本地域が「松本モデル」として機能した事例と言われていますね。

 横倉 ええ。公的病院と民間病院とが日頃から話し合ってきた成果ではないでしょうか。ですから、地域の連携がうまくいっているところは、うまく機能したわけです。福岡もそうです。急速に患者さんが増えたけれども何とか医療体制を維持できた。

 そのために、もちろん病院の病床も増やしましたが、同時にホテル療養も行っていたと。ホテルには24時間、医師と看護師が待機したわけです。そういった地域は普段から連携し、努力を重ねてきたということです。

 都道府県には「地域医療対策協議会」があります。そこで地域単位での連携について議論するのです。さらに、その下にも細分化した地域単位で連携を議論する場があります。そこでの取り組みをしっかり機能させておけば大丈夫なのです。

 やはり今回のパンデミックは国難です。国難のときは、政府も行政も、医療関係者も、ひいては国民の皆さんも感染症を克服するために、皆ができることを協力していかなければなりません。問題点があればきちんと議論していけばいいのです。

 ―― 国民も当事者意識を持たなければなりませんね。さて、岸田政権では「経済安全保障」を柱の1つに据えています。国産ワクチンや国産治療薬についての見解を効かせてください。

 横倉 これらは日本にとって必要です。国産ワクチンだけを見れば日本は出遅れているように見えますが、基礎的な研究では日本は早かった。しかし、これを製品化する段階で十分な支援がない。メーカーにとってワクチンは、どれだけ使えるか分からないという悩みがあります。

 研究開発に資金を投じてもその危険性があるからなかなか難しいと。日本の製薬メーカーにとっても、日本という小さな島では、ファイザーの100分の1ぐらいの市場規模しかありませんからね。そこは国による支援などが必要になるでしょう。

 私も去年の会長時代に国産ワクチンの早期開発に政府が支援すべきだと申し入れを行いましたが、なかなかうまくいきませんでした。ただ、塩野義製薬や第一三共など日本にも力はあります。大阪大学も開発に熱心ですから大学の力もあります。

【コロナ危機の今】「目指しているのは、インフルエンザと変わらない世界の実現です」 手代木 功 塩野義製薬社長

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