2021-11-15

大和ハウス社長の決意「かつて開発した住宅団地にコミュニティを蘇らせる」

芳井敬一・大和ハウス工業社長



 ─ ESG(環境・社会・ガバナンス)、SDGs(持続可能な開発目標)が大きな潮流になっていますね。そんな中で大和ハウスは、かつて開発した住宅地を「再耕」すると言っていますね。どういう仕事を手掛けているんですか。

 芳井 元々、当社が開発してきた住宅団地「ネオポリス」を再び耕す、再び輝かせるというイメージです。

 我々はこれまで、自分達が開発してきた街をほったらかしにしてきたわけではないのですが、戸建て住宅の住宅団地ではマンションのように管理組合があるわけでなく、共用部の管理を請け負うというわけではありません。住宅開発では、ある一定の時期が来ると、自治会にお返しするわけです。

 別に私達が退場したわけではないのですが、どうしても街は自治会、町内会の方々で運営をしていくことになります。

 それを今、もう一度いろいろな街に戻って、皆さんが今困っていることを解決しようと。例えば住み心地はどうなっているか、将来近所で空き家が出そう、家をリフォームしたい、あるいは仕事をどうしようかといった、様々なご相談をしていただけるような立ち位置に、大和ハウスは戻りたいと思っています。

 ─ 住民の皆さんの反応はどうですか。

 芳井 我々への期待とともに、住民の皆さんには今、我々にして欲しいこともあると思います。そうしたことに対して、我々が様々な形でお手伝いができるようにしようというのが「再耕」なんです。

 ─ 街を再耕する時に、大和ハウスが生かせる強みは何ですか。

 芳井 経験ですね。今後、持続的な街づくりが求められる時に、多くの人から「大和ハウスさんがこれまでつくってきた街はどうなっていますか? 」と聞かれることもあると思います。

 そこをほったらかしにして、新しい街づくりをするというのは個人的に私の常識の中にないんです。これまで手掛けてきた街を再耕してこそ、私達自身、次の新しい街に対する入場券をいただけるのだと思うんです。

 SDGsの目標の1つに「つくる責任 つかう責任」があります。街においては「つかう責任」は住民の皆さんですが、私達は街をつくってきて、大半のお約束を果たしてきました。

 しかしながら、少子化、高齢化になったり、それによって空き家が増えてくるといった状況は、当時としては読めていません。どのカタログを見ても、そんなことは書いていないんです。

 人生にはいろいろなことがあります。私自身も母親の最期を看取るなど、いろいろな経験をしてきましたが、「ありがとう」という言葉、人生を「よかった」と思えるかは、目をつぶる時だと思うんです。それまでがいくらよくても、最期がそうじゃなければ、「ありがとう」と思わないかもしれません。

 我々、大和ハウスは、その住まいの部分で、しっかりお手伝いしたいと思っているんです。

 ─ よく、都会にはコミュニティがなくて寂しいという一方で、あまり周囲から干渉されず便利だという意見もあります。このバランスが大事ですね。

 芳井 ええ。今、いろいろな街に我々のメンバーが行っていますが、住民の皆さんが一番求めているのはコミュニティです。昔ほどコミュニティがなくなっていますが、どうやってつながるか。これが一番の問題になっています。

 お隣さんも昔から住んでいる人ではなく、違う人になっていてつながらない。昔から共に、子供達も同じ世代でつながっていた人達が引っ越してしまう。だからつながり方がわからない。

 では、単純に自治会をやりましょうかではつながらないんです。そこには創意工夫が必要です。ですから、社内のメンバーには場所場所にあった方法でやりなさいと言っています。いろいろ取り組んでいますが、まだまだこれからですね。

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