2021-11-15

大和ハウス社長の決意「かつて開発した住宅団地にコミュニティを蘇らせる」

芳井敬一・大和ハウス工業社長



ネットで研究、最後はリアルで


 ─ ネットが様々な場面で活用される今ですが、大和ハウスが手掛ける、ネットで販売する戸建て住宅「ライフジェニック」が好調だそうですが、この要因は?

 芳井 まず、お客様自身が展示場に行かなくてもいいという点です。今はコロナ禍ですから、展示場に行くと、ともすれば混雑していて、どうしてもいろいろな方と接触してしまいます。

 お客様は元々、大和ハウスの評判はどうだろう、他社はどうだろうということを事前にネットで調べられていたんです。今はこの見せ方、中身が当社も含めて非常に充実しています。

 コロナ前のネット上のカタログと、コロナ後、特にごく最近のものは当社も他社さんも全く違うものになっています。お客様に、この本気度が伝わっているのだと思います。それによって、コロナ前は月2万PVだったものが、コロナが始まってからは6万PVに増え、今は安定的に10万PVになっています。

 これはネットでの情報に皆さんが満足されている表れだと思いますし、その時点で選別される方が増えてきたということだと思います。

 ─ 実際に、ネット経由で住宅を購入するのは20代、30代、40代ですか。

 芳井 そうですね。つくり手の意図以上によくご存知ですね(笑)。

 ─ 今やネットは住宅事業においても重要なツールになっていると。

 芳井 完全に重要ツールになっています。今後は、ネット経由で展示場に来られて購入に至るという形がさらに多くなっていくかもしれません。

 ─ ただ、最終的には展示場などリアルで見たいという欲求もあるわけですね。

 芳井 リアルも大事です。住宅展示場がお客様にとって都合がいいのは、1カ所に車を停めれば、ご自身が見たいところを3つくらい回ることができることです。それがバラバラに各社の物件を見ていくと大変です。その意味で今後は展示場の役割も、少し変わってくるかもしれません。

 ─ 研究はネットで、最後はリアルでという流れですね。

 芳井 研究は十分されていますね。ネット上の口コミもあり、皆さんよく見られていますね。リアルとデジタルの融合が大事だと思います。

 ─ 今、全産業的に人手不足が言われています。大和ハウスはどう対応していますか。

 芳井 例えば大和物流などの物流事業では高齢化などもあって人手不足になっていますね。ただ、政府ももっと女性に活躍してもらおうと言っていますが、私も本当にそう思っています。

 特に建築の分野では、女性の活躍は労働力としてのみならず、競争力につながるものと期待をしています。

 おそらく住宅業界で、当社は女性の工事監督者数でナンバーワンではないかと思います。先日も、当社の東京本社近くのホテル建築で女性社員が監督を務めました。

 ─ 現場をまとめる力もあるということですね。

 芳井 ありますね。男性陣もよく言うことを聞いています(笑)。

「大和ハウスにいてよかった」という辞め方を


 ─ ところで岸田政権は「所得倍増」と言っていますが、この政策をどう見ますか。

 芳井 実現すればみんな、タンスに入れずに消費に回すと思いますから非常にいいことだと思います。

 こうしたスローガンのように、我々も社員に対して、目標をきちんとつくっていかなければならないと思っています。それが今回の事業本部制だと考えています。今後、それぞれの本部ごとに濃淡も出てくる可能性もあると見ています。

 ─ 働き方に関して、従来のメンバーシップ型からジョブ型へとの意見も出ています。芳井さんの考え方は?

 芳井 難しいところです。日本人は終身雇用に慣れています。ただ、キャリアをつくって、次はこういうことがやりたいから転職していくのがいいことだという時代に早くしなければいけないと思っています。

 私も転職組ですが、転職を繰り返すことは悪だと思われる方はおられます。しかし当社としては、卒業して出て行かれる方をポジティブに考えた方がいいといつも言っています。

 特に若年層で、どうしても仕事が合わずに辞める人もいます。こうした人達も、いずれ戸建て住宅を建てたり、マンションを買ったり、賃貸住宅に住みます。辞める人達に「大和ハウスグループにいてよかった」という辞め方をしてもらって下さい、と話しているんです。

よしい・けいいち
1958年大阪府生まれ。81年中央大学文学部卒業後、神鋼海運(現・神鋼物流)入社。90年大和ハウス工業入社。2011年取締役上席執行役員、16年取締役専務執行役員、17年11月社長、19年6月社長兼CEO。

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