2021-11-18

【内部留保を成長分野へ】大企業が創業6年のベンチャー・Relicと協業する理由

北嶋貴朗・Relic社長


挑戦者を支援するプラットフォーム

 成功も失敗も経験しているからこそ、重視したのは「提供価値の広さ」と「再現性」。そこで「新規事業開発のプロセスや取り組みを、ある程度システム化すること」にこだわって生まれたのが、現在の3つの事業。

 まず、ITスタートアップとして、自社開発の新規事業開発に特化したSaaS型プラットフォームを提供する〈インキュベーションテック事業〉。

 事業アイデアの創出や構想・プラン策定を支援するイノベーションマネジメントプラットフォームの『Throttle(スロットル)』。

 事業アイデアを検証し、テストマーケティングを行えるクラウドファンディングとeコマースのプラットフォーム『ENjiNE(エンジン)』。

 手応えのあった事業を成長させ、ファン獲得を支援するマーケティングオートメーション機能を持つ『Booster(ブ ースター)』などがある。

 ベンチャーがこぞって参入するSaaS(Software as a Service)事業だが、『Throttle』『ENjiNE』は国内シェア№1のサービスだ。

 2つ目は〈事業プロデュース・ソリューション事業〉。「オーダーメイドでプロジェクトを組み、トータルで新規事業開発のソリューションを提供する」コンサルタント事業。

 3つ目は、スタートアップ投資や大企業との共同事業/JVなど、パートナーとRelicが共に事業を創っていく〈オープンイノベーション事業〉。

 様々な形の支援をするのは各社各様の課題に対応するため。

 ユニークな例を紹介すると、『DUALii(デ ュアリー)』というスキームがある。北嶋氏いわく新規事業の「代理出産」モデルだ。

 大企業の新規事業を阻害する要因に「自分たちの名前でよくわからない事業を始めて失敗したらどうするのか」という“レピュテーションリスク”や「新規事業の品質が悪いと既存事業の品質まで疑われる」と“ブランド毀損リスク”を恐れ、駆け出しの新規事業で既存事業と同じ品質基準を求めて高コストで採算が取れないことなどがある。

 だが、どんな新規事業でも、最初は不確実性が高いもの。

 そこで、不確実性のフェーズはRelicが運営主体としてスピーディに事業開発や検証を進め、事業が軌道に乗ったタイミングで大企業主導の事業に変え、規模拡大で成長を図るという。

「いろんな会社といろんな事業をやっていると、全体最適が難しく、1個1個の事業の可能性を引き出せないケースが出てくることがある。そこでホールディングス体制にして、柔軟に会社を作れるようにしました」

 今年9月には持株会社体制に移行。1つの会社で複数の事業を手掛けると「1億円稼ぐ事業と50億円稼ぐ事業で軋轢が生まれてしまうこともある」。1つひとつの事業が最良の経営判断をできるようにするためのHD化だ。

「僕自身が1個の事業を立ち上げてうまくいくより、日本の多くの会社がうまくいったほうがインパクトは大きい。リスクを取って挑戦する人が正しく評価され、正しく報われる社会を創ることを目指している。そのためにも、挑戦者を支えるインフラ、プラットフォームになりたい」(北嶋氏)

 30年近く成長が止まった状態の日本。活性化のためには、新たな事業を創出し、新たな需要を生む必要がある。2020年末の企業の内部留保は484兆円。チャレンジの文化が企業に根付けば投資にまわる資金も増えていくだろう。

【酸素泥棒】

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