2021-11-18

【日本のガバナンスを問う・2】岩村充・早稲田大学名誉教授

岩村充・早稲田大学名誉教授


司法的なレベルでの社外取締役の位置づけが曖昧



 ―― 他人に何かを要求するのであれば、責任を持てと。これは人として当然のことでもありますね。

 岩村 もう1つ、わたしが不思議なのは、複数の社外取締役を兼任されている方がいますよね。これは自分自身の経験から照らし合わせてもあり得ないと思うんです。というのは、どこで利益相反の疑いが出てくるか分からないじゃないですか。社外取締役として一般論以上の発言と行動をするのであれば、自分が忠実であるべき相手は1社、多くても2社程度でしょう。

 ―― これは岩村さんが富士火災海上保険の取締役などを経験したことを踏まえた上での感想ですね。

 岩村 ええ。例えば、特に顧客や関係性を自ら選ぶことが社会通念上許されないコマーシャルバンクの取締役を、他の事業会社の取締役と併任で受ける人がいるというのは、わたしには信じられません。何が起こるか分からないですし、かつて7社の社外取締役を兼任していた人がいましたけど、取締役会のスケジュール1つ組むのだって大変だったはずですよ(笑)。

 だから、わたしはそうした人たちに聞いてみたい。あなたは1社、1社真面目に考えていますかと。要するに、兼任するのであれば、その理由をしっかり説明してしかるべきだと思いますし、やはり、わたしは職業として3つも4つも取締役や監査役を引き受ける人というのは、どういう利益相反意識を持っているのかと疑問に思いますね。

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