2021-12-03

日本M&Aセンター社長が語る「日本全体で黒字倒産の危機にある会社は60万社。これをM&Aで救いたい」

三宅卓・日本M&Aセンターホールディングス社長



「ブリッツスケール」を実現した10年間


 ─ 今回の持ち株会社化は10年先、15年先を見据えたものと言えますか。

 三宅 そう考えています。私はこれからの30年を「第2創業」と定義しています。当社はこの10年間で大きく成長し、時価総額も1兆2000億円、社員数も900名弱まで来ました。ブリッツスケール(Blitzscale =爆発的成長)ができたと自負しています。

 ただ、今後の日本を考えると、まだまだ足りません。先程の黒字倒産が危惧される60万社も救っていかなくてはいけない。

 また、日本は人口が減少していますが、中でも20歳から64歳までの就業人口が激減していきます。その中ではアジア、ASEAN(東南アジア諸国連合)との連携が大事になってきます。

 そういう時代の中で、今までのやり方、成長戦略ではなく、次世代はもっとダイナミックに動いていかなくてはなりません。私の世代はブリッツスケールを果たしましたが、会社はこれからさらにいろいろなことに取り組んでいかなくてはいけない。この仕事は次世代の人達にやって欲しいという意味での「第2創業」です。

 ─ 会社が生まれ変わるイメージですね。

 三宅 そうです。日本M&Aセンターは生まれ変わります。2021年11月5日に創業30周年記念イベントとして「M&Aカンファレンス2021」を開催しましたが、テーマが「Exceed30th」としました。30周年を超えて飛躍していくという意味を込めています。

 ─ 三宅さん自身、M&Aという仕事を手掛けてきて、この仕事に対してどういう思いを持っていますか。

 三宅 M&Aは最高に面白い仕事です。ディールそのものも、1人ひとりの経営者の人生があり、大きなドラマがありますし、従業員とそのご家族の生活、未来をつくっていく大事な仕事でもあります。

 ビジネスとして見た場合にも、日本のM&A業界は未成熟、未発達ですから、工夫次第でいくらでもやりようがありますし、イノベーションを起こすこともできると思います。

 しかも、社会的使命があり、お客様に喜んでいただける仕事です。ですから、若い人達にどんどん業界に入ってきてもらいたいと思いますし、そこで活躍してもらいたいと思いますね。

 ─ 三宅さんからご覧になって、どういうタイプの人が伸びていますか。

 三宅 第1に使命感がある人、第2にハングリーで上昇志向がある人、第3にクールヘッドとウォームハートの人です。

 このクールヘッド、ウォームハートは非常に大事です。社長さん、従業員の方々の気持ちに共感できるウォームハートが必要ですが、一方で客観的なファクトを冷静に見て判断できるクールヘッドがなくてはいけません。この2つが共存していないと伸びないですね。

末期がんの経営者からの依頼


 ─ 三宅さんが手掛けてきて、印象的だった仕事は?

 三宅 ある製造業を経営する末期がんの経営者からのご依頼が心に残っています。通常ならば半年かかる仕事を3週間で仕上げました。その経営者は亡くなってしまうのですが、その方が心配しておられた従業員とそのご家族、得意先、仕入先は全て救うことができました。

 もし、M&Aを活用しなかったら、廃業になるところでした。従業員が約40人いましたが、廃業となれば路頭に迷ってしまいますし、例えばお子さんが高校生であれば中退することになるかもしれません。そうなったら、そのお子さんはどういう人生を歩むか。どういう仕事に就くことになるか。このM&Aは多くの人を救うことができたと思います。

 ─ 地域経済を救う仕事でもあると。

 三宅 マクロ的に言えば、当社は20年度、405社の仲介を手掛けましたが、GDP(国内総生産)に対して3767億円の経済損失回避効果があったという試算を、当社グループの矢野経済研究所が出しています。

 それらの企業の従業員数の合計は3万人弱でしたが、ご家族を含めると約10万人の生活を守ったと言えます。そして、会社の事業は継続していますから、今後10年、20年と続いていくわけです。

 これらの会社が10年間、そのままの状態で継続したとして、10年間累計で3兆55億円の経済損失回避効果が見込めます。もちろん、これらの企業は相乗効果で成長しますから、さらに大きな効果があると言えます。

 M&Aは、こうした社会的意義のある公共性の高いものだということを、さらに中小企業に知っていただき、日本経済に貢献していきたいと思います。

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