2021-12-08

伝統の多角経営を進化【旭化成 ・小堀秀毅】の『3領域経営』と『GDP戦略』

旭化成社長 小堀秀毅



会社の方向を決める会議は『リアル』で

 感染症も収束してきたとはいえ、これから冬の季節を迎え、第6波襲来にも警戒が必要。そういう状況の中、これまでリモートワークを推奨してきた企業の側でも、週3日あるいは週4日の出社を社員に通達する企業も出始めた。
 リモートワークとリアルな出社との関係をどう見るべきか?
「ディスカッションはリアルの方がいいかなと思っています」と小堀氏は語り、今後はハイブリッド(融合)で臨んでいくと語る。
「中期経営計画の状況報告についてのディスカッションは今日もリアルでやっていましたが、定例会議での一方的な報告はリモートで十分じゃないかと思います」
 取締役会は月に1回強のペースで、年間に14回から15回。この取締役会や月2回の経営会議はリアルで開催。
 さらに、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3領域会議もリアル方式で開催している。「次の旭化成のための重要な施策を打ち、課題解決を図るためのディスカッションはリアルの方がいい」という小堀氏の判断である。

コロナ禍を機に循環型経済を!

「今、カーボンニュートラルに向けて、企業も一層の努力をと盛んに言われているわけです。各企業のCO₂排出量を減らすとか、そのためのエネルギー政策はこうだと国は言っているわけですが、これが今度、家庭に入ってきます」と小堀氏。

 住宅の分野でも、『ZEH』(ゼロ・エナジー・ハウス)という考え方が登場。家庭で使用するエネルギーも、できるだけ再生可能エネルギーにして、CO₂の排出もゼロにしていくという暮らし方の追求だ。

「個々人のライフスタイルをもっと変えていく形にしないと。そのためには、意識を変える。
そこまでやらないと、日本は2050年にカーボンニュートラルを達成できないと思います」
 そのためには何が必要なのか?
「そうすると、循環型社会、サーキュラーエコノミー(循環型経済)にしていくとか、リサイクルの実行、また自分の健康も自分でしっかり維持していくと」

 こうしたエコシステム実現に向けての改革の中で、企業はどう行動していくのか。
「われわれはマテリアルとか、医療分野までいろいろなテクノロジーを持っている企業です。ケミカル(化学)からファイバー(繊維)、エレクトロニクスと、産業の変化にいろいろな分野で大きく貢献できるテクノロジーを持っています。カーボンニュートラルという大きな壁、CO₂排出量をゼロにしていかなければいけないということは相当なコストアップになったり、増資を伴います。しかし、逆にいえば、ライフスタイルも変わり、価値観も変わる中で、大きなビジネスチャンスをつかむことにもなると」

 コロナ危機は企業活動や個人の生き方に制限や負担を与え、人々を苦しめてきた。
 半面、コロナ危機はそうした経験を踏まえ、人々が目指すべき社会をも示唆してくれている。「ええ、われわれは住宅事業を持っているし、それから医療・医薬も持っているし、素材系のテクノロジーも持っている。だから、これからの水素社会には、グリーンな水素をつくる電気分解を活用したわれわれのテクノロジーが生きるだろうと。CO₂を回収、分離して、それを原料にポリカーボネート樹脂をつくるのもその1つです」

 ポリカーボネート樹脂は従来、石炭由来のものだったが、CO₂から生産することで、関連産業も一変しそうだ。

本誌主幹 村田博文

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