2021-12-09

SBI・北尾吉孝が新生銀行獲得で背負った『プラス・マイナスの両面』

北尾吉孝・SBIホールディングス社長



「第4のメガバンク構想」で新生銀の役割は?


 これで焦点は成長戦略、そして新生銀行が抱える公的資金をどう返済していくかに移る。

 北尾氏は25日にブログを更新、「私が目指すは正に、新生銀行グループとSBIグループが一体となって心を一にし、そして収益力を上げ公的資金3500億円を返済するという大義を果たすこと、こそです」とした。

 新生銀行の利益剰余金は21年3月期末で約4300億円。数字だけ見れば完済できそうに見えるが、そう簡単ではない。

 政府はこれまで新生銀行、前身である日本長期信用銀行に対して約5000億円の公的資金を注入、現時点で約1500億円を返済している。

 だが、優先株で注入された公的資金は08年までに普通株に転換。政府が公的資金を回収するには、1株当たりの株価を7450円まで高める必要があるが、11月末時点の株価は1900円台と3倍以上の開きがある。工藤氏は「普通株転換は結果的に失敗だった」と話した。

 市場では、SBIが新生銀行の持ち株比率をさらに高めた上で、政府と合計で3分の2以上にして自社株買いを実施、大半を取得できた時点で少数株主から株式を買い上げて上場廃止にする、政府に対しては相対で公的資金を返済する、といった案も取りざたされている。

 もちろん、新生銀が持つストラクチャードファイナンス(仕組み金融)やクレジット投資、子会社の「アプラス」が持つカードローンなど消費者金融のノウハウを活用し、提携地銀の収益力の底上げにつなげるといったシナジーで業績を向上させ、株価を高めていくという正攻法を取る可能性もある。

 また、国際業務も手掛ける新生銀行を、信金業界における信金中央金庫のような「マネーセンターバンク」にし、提携地銀の資金運用の効率化、海外投融資の進出支援といった役割を担わせるシナリオも考えられる。

 これで北尾氏の構想は大きく前進する可能性があるが懸念もある。今回、SBIが新生銀行に対して強硬な姿勢を取ったことで今後、地銀がSBIとの提携に二の足を踏む恐れがあること。また、OBを受け入れるなど良好な関係を築いてきた金融庁との関係にも、さらに厳しい目が注がれる可能性があること。

 大手証券会社首脳は「両社の組み合わせで新しいものが生まれる可能性もあるが……」と期待を示しながら、先行きの不透明感で言葉を濁す。大手行で唯一残る公的資金返済と成長戦略。この実行に向けた北尾氏の次の一手が注視されている。

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