2021-12-11

【株価はどう動く?菅下清廣氏に聞く】米中対立で「漁夫の利」、難民問題の重荷のない日本が見直される展開に



地政学リスクをどう捉えるか?


 一方、国際情勢を見ると、2つの要因が日本にプラスになる可能性があります。

 1つは米中対立です。この新しい冷戦構造の中で、米国にとっても中国にとっても、改めて日本は重要な国になってくる。ですからかつての米ソ冷戦時のように、日本は「漁夫の利」を得ます。

 米国の同盟国としてのメリットを享受しつつ、中国に対しては米国との対話を支援するといった姿勢でいけば、米国だけでなく中国との関係も悪くないものになるのではないでしょうか。

 台湾海峡問題や尖閣諸島問題もあり、中国はこの件で強烈に威嚇してくるとは思いますが、実力行使はないと見ています。

 もし、中国が実力行使に出たら、それを機会に米国は、民主主義国家にとっての脅威だということで中国を徹底的に叩くことになりますし、そのことを中国はよくわかっているはずです。

 ですから、地政学リスクについては、それほど心配する必要はないのではないかと見ています。そして日本は米中冷戦の恩恵を被って、経済にとってプラス材料が出てきます。それを受けて、日本の株価は2022年以降、ジワジワ上がっていくと見ています。

 もう1つの海外要因は米国、欧州で大きな課題となっている「難民問題」です。今、欧州ではポーランドに難民が集結していますが、これはいずれ欧州全体の問題となっていきます。いわば独裁国家の戦略でもあるからです。武器で攻撃するよりも難民で攻撃した方が簡単だというわけです。

 難民の増加は社会不安につながりますし、社会保障やセキュリティなど、対策には巨額の費用が必要になり、国力の低下にもつながります。

 米国の国境にも、中南米からの難民が押し寄せていますが、この流れは一層強まるだろうと見ています。

 今の世界の情勢は、以前から指摘しているように米国発の大規模金融緩和による「マネーバブル」が起きており、資産インフレが拡大しています。

 その結果、持てる者、持たざる者の格差は一層広がっています。一方に資産30兆円というテスラ創業者のイーロン・マスクのような人間がいますが、世界人口の7割は銀行口座を持っていないと言われます。

 では、難民が押し寄せない国はどこか。それが日本です。難民問題のない日本は、欧米先進国よりも社会が安定していますから、改めて評価が高まるだろうと思います。

 ですから、世界の投資家の中には日本に投資をしたり、住みたいという人も多くなるのではないでしょうか。観光ではなく、自らの資産を日本に置こうという動きも強まるものと見ます。

 1979年の米社会学者・エズラ・ヴォーゲルの著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』とは違う角度で、日本の文化、社会の質(クオリティ)の高さが再び見直されることになります。そうした新しい「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代がやってきます。

岸田政権の政策が株式市場の一番のリスクに


 今、日本の株式市場にとって一番のリスクは、岸田首相が選挙前に一度「当面触れない」とした「金融所得課税」の強化が再び議論の俎上に上ってきつつあることです。仮に実行したとしたら株価、支持率の急落につながることは間違いありません。「岸田辞めろ! 」の怒声が飛び交うことになるでしょう。政権が短命に終わる要因になりかねません。

 内閣支持率と日経平均株価はほぼ連動していますから、株価が上昇する内閣でなければ持たないと思います。

 金融所得課税の強化をするようであれば、先行きは暗いと言わざるを得ません。その意味でも、経済やDXにも通じている甘利氏の幹事長辞任は、岸田政権のウィークポイントになる可能性があります。

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