2021-12-21

カップヌードル誕生から50年【日清食品HD・安藤宏基】の食は平和産業の視点で地球食の展開を

日清食品HD 安藤宏基社長・CEO

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危機時に頼られる食料に

 有事に役立つ企業─。 大地震や台風などの有事の際、日常生活を支えるガス、電気などの生活インフラ基盤も損傷し利用できない状況になる。
一番大事なのは、命をつなぐ食をどう確保するかということ。
 1995年(平成7年)1月17日朝に起きた阪神・淡路大震災。多くの犠牲者が出て、随所で火災が起こり、飢餓的状況が発生した。
 同社はただちに救援隊を組織し、給湯器付きのキッチンカーとライトバンの計3台に即席麺約1万5000食を積んで神戸市内の避難所に向かうなど、被災者支援に当たった。

 こうした被災者への提供のほか、自衛隊や自治体の対策本部に合計100万食を緊急輸送。全て無償提供である。
 2011年の東日本大震災時は、210万食を無償提供。普段、消費者の間で築く関係の強さを、有事に再確認できた。
『カップヌードル』は1971年(昭和46年)に発売。この年には、日本マクドナルドが同じファストフードであるハンバーガーを売り出している。

『カップヌードル』が世の中に一気に注目されたのは翌72年2月、厳寒期に起きた連合赤軍による浅間山荘事件の時である。
 雪の中で山荘を包囲する機動隊員たちが立ったまま、『カップヌードル』で食を取っている映像がテレビ中継で流された。
 近所の農家から米の炊き出しもあったが、寒さのため、おにぎりもすぐカチカチに凍ってしまい食べにくい。そんな中、温かい『カップヌードル』が差し入れされ、緊急時の食としての認知が一気に高まった。

「常日頃、新製品を出すとか、マーケティングに力を入れるとか、努力をしなければいけないんですけれども、一生懸命努力をしていると、有事の時に一段と事業が伸びます」
 平時の研鑽、努力がいざという時に力を発揮することにつながるということ。まさにレジリエンス(耐性、柔軟力)の事業構造になっているという考えを安藤宏基氏は示しながら、次のように続ける。
「こうした事業構造は創業者の最初の基本設計によるものです」と。

会社発展の基礎は創業期の『開発5原則』に

 百福氏は、戦後間もなく、食の分野に自らの居所を定め、『開発5原則』(おいしい、安全・衛生性、簡便性、保存性、廉価性)を掲げた。こうした、経営を担っていく上での〝最初の設計〟が今の日清食品ホールディングスを支えていると宏基氏は強調する。

『食足世平』、『食創為世』、『美健賢食』─。創業者・百福氏が経営の基本に据えた言葉だ。

『食足世平』。食が足りてこそ、人は心安らかになるという意味。「やはり理念として、例えば食創為世にしても、当時1958年ですから戦後10年余で、食が一番大切なんだと。食を満たすことが平和をもたらすんだということで、その時の新しい食文化をつくりたいと。インスタントラーメンという新しい食文化をつくりたいと願い、創業者は具現化していったわけです」と宏基氏。

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本誌主幹 村田 博文

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