2021-12-28

【経済産業省】石油国家備蓄を異例の放出 原油高で国際協調も効果は疑問

原油価格の高騰が長期化する中、政府は国が備蓄する石油の放出を決定した。萩生田光一経産相が「(国内消費量の数日分に当たる)数十万キロリットルを、米国や関係国との協調を勘案し、前倒して売却する」と表明。米国が主導する国際的な石油備蓄の放出に協調し、原油価格の抑制を狙って国家備蓄を売却する初のケースとなる。

 国内の石油備蓄には、政府による「国家備蓄」と、石油会社に義務付ける「民間備蓄」などがある。9月末現在の国家備蓄の量は145日分で、目標の90日分を大きく上回る。過去には中東の政情不安や災害時の石油不足などに対応し、民間備蓄を放出した実績がある。

 経産省によると、日本の1日当たりの石油消費量は約30万キロリットル。経産省は正確な放出量を公表していないが、協調放出を主導する米国などによると、日本は420万バレル(667万キロリットル)を計画しているとみられ、売却量としては2日分に相当する。

 ただ、効果自体には疑問符が付く。今回の協調放出が全て実行されても、「産油国による世界全体への供給量から見れば微々たるもの。放出のタイミングを各国が揃えたとしても、価格への効果は一瞬」(大手商社)。原油価格の高騰は、コロナ禍からの世界経済の回復による需要の増加が背景にあり、長期的な傾向だ。

 足下の原油相場は、新たな変異株「オミクロン株」の急拡大への懸念から、上昇に歯止めがかかっている。原油価格に最も影響を与えるのは、その需要を左右する景気動向であることを証明する動きだ。

 萩生田経産相は石油備蓄売却に向け、「入札の手続きを可能な限り速やかに進めたい」としているが、原油相場がこのまま落ち着きを取り戻せば、「協調放出自体も忘れ去られる」(経済官庁幹部)可能性すらある。

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