2021-12-30

≪政府と民間の橋渡し役として≫ 金丸恭文・フューチャー会長兼社長

アナログの緻密さとデジタルの融合を



 ―― 岸田政権の「デジタル臨時行政調査会(臨調)」で民間有識者に選ばれたフューチャー会長兼社長の金丸恭文さん、日本の再生に向けて、今どんなことが必要だと考えますか。

 金丸 コロナ禍で分かったことは、日本のデジタル化の遅れです。例えば、ワクチン接種データをみても、ワクチンを提供するのは政府ですが、接種の窓口となるのは各自治体ですから、接種データを誰が管理するのかという議論になりました。そして答えが出ないために、肝心のデータが全く使えなかったわけです。まずはこうしたデータの所有や活用について整理しなければなりません。また、刻々と変わる状況に対応するため有事モードに切り替え、危機管理能力を強化する仕組みが必要です。

 そもそもマイナンバー制度に対して、国民の中には資産や健康といった個人情報を国が管理することに漠とした不安があります。政府も必ずしも納得できる説明ができているとは言い難い。ですから、まずは預かったデータをどう管理し、国民生活の向上にどう役立てていくのかをきちんと説明して納得してもらわなければいけません。その上で、抜本的な改革を進めていく必要があります。

 ―― これは相当大変な作業になりますね。

 金丸 ええ。ですが、見方を変えれば、日本はデジタル武装が全然できていないにもかかわらず、世界3位の経済大国です。ということは、デジタルの課題をクリアできれば、相当な成長の余地があるといえる。

 もともと日本人は人の手による緻密な作業が得意で、アナログの技術で世界を圧倒してきたわけですから、そこにデジタルが加われば最強じゃないですか。アナログの緻密さとデジタルの融合によって、同じようにデジタル武装した相手をも凌駕する競争力を得られると思います。

 そのためには戦略を立て、シナリオを描き、実行までをやり抜かなければなりません。しかし、役所の方たちは人事異動で2~3年で担当者が変わってしまう。きっちり結果が出るまでは、人事を動かなさいという覚悟も必要でしょう。

 ―― 政府と民間の橋渡し役を担う金丸さんならではの指摘ですね。本業や起業家の育成についてはいかがでしょう?

 金丸 先ほどの米良さんのように、今後の活躍を期待したい起業家が増えていることを嬉しく思います。かつてわたしがウシオ電機創業者の牛尾治朗さんやセコム創業者の飯田亮さんに薫陶を受けたように、わたしも若い方々に自分の経験をより多く伝えていきたいです。

 また、社会全体に危機感が漂っている時こそ、この危機をチャンスに変えようとDX改革に本気で取り組む企業が増えています。当社の果たすべき役割も大きくなっており、非常に手応えを感じています。

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