2022-01-04

『2022年を大胆予測』特別インタビュー 安永竜夫・三井物産会長

脱炭素化への移行の責任ある担い手として



 ―― 三井物産会長の安永竜夫さん、世界中で脱炭素化の流れが加速する中、商社の役割をどのように考えますか。

 安永 地球温暖化を食い止めることは、全産業界にとって大きなミッションです。ただ、今回のパンデミックと若干いき過ぎたグリーン化の流れが、既存のシステムを軋ませている感じがします。

 それが結果としてエネルギー価格の高止まりを引き起こし、一次産品に波及している。特に日本は資源を始め、一次産品のほとんどを輸入に頼っているので、企業の調達コストにものすごく影響を与えています。しかも、価格転嫁をすればマーケットシェアや購買が落ちるということで単純な値上げはしづらい。これでは企業の体力は持ちません。ですから、きちんと価格転嫁をし、利益を守っていけるかということを真剣に考えていく必要があります。

 われわれも可能な限り競争力のある資源やエネルギーを確保していきますが、一方で原油や天然ガスなどの化石燃料に新しく投資しようとすると、グリーンの名のもとに市場の一部からはネガティブな反応が出てくる。しかし、どんなに再生可能エネルギーを増やすとしても、一気に化石燃料がいらなくなるわけではなく、移行期間が必要です。

 そこのバランスをいかに取っていくか。三井物産は責任ある移行の担い手にならなくては、と考えます。

 ―― そこが商社の役割を果たせるところになると。

 安永 ええ。ですから、われわれは一定程度、経済成長に必要な原油やガスは安定供給を確保しつつ、それぞれの国の実情に合った移行のロードマップを描いて、水素やアンモニアといったクリーンエネルギーのサプライチェーン(供給網)構築に貢献していく。その両建てで進めていきます。

 ―― どうしても、エネルギー政策というのは国によって実情が違いますからね。

 安永 そうなんです。今は日本政府が「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」といって、アジアの持続的な経済成長とカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)の同時達成に向けた道筋をつくっていこうとしていますから、全体像を示すのは政府にやっていただき、われわれは具体的な事業に落とし込んでいく。

 その過程においては、日本のメーカーや電力会社、ガス会社を巻き込んで一緒に進めていく必要があると思いますので、そこは商社の得意分野です。

 こうしたエネルギーソリューション分野に加え、今後はアジアが経済成長していきますので、ヘルスケアやリテールも伸ばしていく。その両輪が今後の三井物産の成長戦略になってくると考えています。

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