2022-01-05

『2022年を大胆予測』特別インタビュー 茂木友三郎・キッコーマン取締役名誉会長

デジタル化は生産性向上のための手段であって目的ではない!


 ―― 企業の生産性向上を訴え続けているキッコーマン取締役名誉会長の茂木友三郎さん、まずは22年の世界の経済情勢をどう見通していますか。

 茂木 コロナ発生当初に比べて我々にも知恵が出てきて、うまく共存する傾向が見られるようになりました。ただ、業界ごとにインパクトが相当違う。その中で言えることは、今後は元に戻るよりもニューノーマル(新しい常態)に移行していくのではないかと思います。ですから、新しい常態にどう適応していくかで変わってきますね。

 ―― 岸田政権は「新しい資本主義」を掲げています。経営者に求められる心構えとは?

 茂木 私が約60年前に留学した米国コロンビア大学経営大学院では「経営哲学」という科目が必修でした。ここでは企業経営者は株主のために利益を追求するだけではダメで、従業員や地域社会など他のステークホルダーのことも考えて経営しなければいけないと教えていたのです。当時は米ソ冷戦時代。米国は社会主義経済に勝つためにも、自由主義経済の良さを世界に示すためにはどうしたらいいかを考えていたのです。

 ―― そこで自由主義経済の良さを打ち出す必要があったと。

 茂木 ええ。そのためには経営者がしっかりしなければいけない。自由主義経済の主役は企業。その企業の経営を掌るのは経営者。経営者がしっかりしなければ、自由主義経済の良さは出てこないということです。

 まず、競争に勝つことをより重視する時代もある。そのときはとにかく競争に勝たなければいけないと。しかし、その方向に行き過ぎると、今度は逆の方向への揺り戻しが起こります。ですから、どちらが良いか悪いかではなく、行き過ぎたら是正すると。その時々に合わせた経営を行っていくということが重要でしょうね。

 ですから、岸田政権が分配に重点を置くという考え方は良いのではないかと思います。これまで自由な競争を行ってきた結果、格差が出てきたと。その格差を是正するために分配を重視するわけですから、私はとても理にかなっていると思います。

 ―― コロナ禍でデジタル化が進展しました。生産性向上とどう絡めていけば良いですか。

 茂木 間違えてはいけないのは、デジタル化は手段であるということです。生産性の向上には付加価値を高めなければなりません。そのための手段の1つがデジタル化です。生産性を向上させることによって経済も成長するし、企業も利益を上げることができます。ただ、デジタル化は手法であり、目的ではありません。目的を達成するためにデジタル化を進めていくことは大変結構なことだと思います。

一喜一憂せずに、経済再生とコロナ対策の両立へ【私の雑記帳】

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