2022-01-12

三菱UFJFG・亀澤宏規のデジタル提携戦略、新たな時代の金融インフラの姿とは?

亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長



プラットフォームとの向き合い方は?


 そのカギを握るのが、デジタル領域の開拓。亀澤氏は「テクノロジー」と「オープン」という2つのキーワードを掲げる。

 従来、MUFGだけでなく銀行グループは「自前主義」が強かったが、それを転換。「我々だけが自前でといってもお客様に選んでいただけない。我々はプラットフォーム、場をつくる。テクノロジーの進歩が、それを可能にした」

 21年12月にはスマートフォンを通じて、資産形成に向けた様々な金融サービスを総合的に提供するサービス「MoneyCanvas」を開始。

 このプラットフォームにはポイントの株式交換サービスで大和証券グループのスマホ証券会社・CONNECT、保険では東京海上日動に加えて損害保険ジャパン、貸付ファンドのオンラインマーケットを展開するベンチャー・ファンズなどグループを超えた他の大手、ベンチャー企業も参画している。

 「グループを超えて、つながることができるところとつながり、お客様にベストなソリューションを選んでいただける仕組みをつくる」(亀澤氏)。この場合は、MUFGがプラットフォームを構築し、そこに人を呼び寄せる形。

 一方、MUFGは通信大手・NTTドコモとも提携。22年内にドコモの「dポイント」がたまる「デジタル口座サービス」の開始を検討している。こちらは「NTTドコモというプラットフォームと組む形。BaaS(サービスとしての銀行)的に銀行機能を提供する」。先々はデータ解析の会社を共同で立ち上げることも検討している。

 さらに、リクルートとはリクルート51%、MUFG49%という比率の「リクルートMUFGビジネス」という共同出資会社を設立し、決済サービス「COIN+」の展開を発表している。加盟店の決済手数料が0.99%(税抜)とクレジットカードのみならず、他のコード決済に比較しても安価な手数料を実現。「我々は裏側の決済だけを出し、表は『COIN+』という形」(亀澤氏)

 自社のプラットフォームもあれば、他社のプラットフォームに機能を提供するケースもあるということ。

 亀澤氏は「デジタル時代は物事を『ヨコ』で見ないといけない」と強調する。従来は「タテ」、商品、サービスごとに物事を見る傾向が強かったが、「ヨコ」、つまり「ファンクション(機能)で見て、どの領域で我々の能力を生かせるかという発想でデジタルを進めていかなくてはいけない」と話す。

 近年、グーグルが日本の決済ベンチャーを買収するなど、ITプラットフォーマーが金融領域への侵食を進めている。これが進めば、銀行グループなどは、プラットフォーマーの1機能になってしまうのではないか? という見方もあったが、MUFGの動きは、その流れに一石を投じるもの。亀澤氏はプラットフォーマーをどう捉えているのか。

「プラットフォーマーは自らのインフラを持った上で、ルールを自分で決め、そこに様々な人を参加させて手数料を取る存在だと思っている」と亀澤氏。

 銀行で言えば、本人確認が済んだ銀行口座や決済機能がインフラに当たるが、アマゾンであれば物流網の上にECサイトなど様々な機能を持ち、アップルであれば「iPhone」をベースにしたインフラを持つ。

「例えばアマゾンやアップルが銀行を展開する可能性もあると思うが、彼らの決済部分のプラットフォームに入るという考え方もある。彼らが単純に金融事業に取り組んでも利益は出ない。決済は損が出るし、コンプライアンスコストも高い。プラットフォーマーとの関係は、基本『協働』になるのではないか」

 表であるか、裏であるかは別にして、必ずどこかにMUFGの金融機能がインフラとして入っていることを目指すということ。この考え方は近年「エンベデッド・ファイナンス」(Embedded Finance=埋め込み型金融)とも呼ばれている。

「プラットフォームを表が牛耳っているのか、裏が牛耳っているのかという議論はあると思うが、少なくとも金融の部分については我々が牛耳って、お客様に表に出てもらう。そして時には我々も表に出ていく」

 時に主役ではなくとも、金融インフラを担い続けるという考え方だ。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事