グローバルで戦えることを日本の経営陣で証明したい 入社時に掲げた改革を着々と進める中、次に髙橋氏が注力するのが人事だ。23年1月の昭和電工と昭和電工マテリアルズの完全統合を前に「人材育成にすべてを懸ける」。
「いい会社というのは社員がどこに行っても働けるような人に育てますという会社だと思っている。統合会社を日本の製造業を代表する人材輩出企業に育てたい」(インタビュー欄参照)
銀行マン時代、海外へ行き、日本の金融の限界を感じ、製造業の世界に入った髙橋氏。製造業の世界では外資の洗礼を受けながら経営力を磨いてきた。だが、心の中には日本の製造業で働きたいという思いがあった。
昭和電工入社時の市川社長(当時)とのやりとりを髙橋氏は、こう語っている。
「市川さんから『君、4年くらいで会社を変えているけれど、来るなら長くいてくれないと』と言われたので、僕は『もし採ってくれるなら戸籍に入れて育ててくれ』と。僕はここ(昭和電工)に骨をうずめる。これは市川さんとの約束だから」
そして「私利私欲はない。色々言っているのに嫌わずに受け入れてくれた。本当にありがたい。森川さん(宏平社長、新会長)にも『気付いたら土足で家に入っていたよね』と言われた(笑)」と続けた。
社長就任時の会見でも「社長になりたいからこの会社に来たわけではなく、外資でいろいろ勉強させていただき、ぜひその経験を活かして日本の大きな製造業の経営に近いところで仕事をしたいというのが目標だった」と語っている。
「日本企業がグローバルできっちり戦えることを証明したいという強い思いがある。それを日本人の経営陣で証明したい」
多くの日本人が失われた30年を経て「なぜ、こうなってしまったのか」と忸怩たる思いを抱いている。髙橋氏は、その思いを自らの経験を活かし、跳ね返そうとしている。
「売上高1兆円規模でEBITDA20%の会社になれれば、社会にも貢献できるし、日本の存在感も増すのかなと思っている。失敗はできない。失敗したら『ほれ、見たことか』とみんなやらなくなってしまうから」
不退転の決意で新たな日本の製造業のモデルづくりに挑む髙橋氏。この挑戦は、日本復活の試金石ともいえるはずだ。
髙橋氏が語る「いい会社」