易きになじまず難きにつく 事業のあり方や構造改革には必ず抵抗や異論がつきまとう。
塩ビや苛性ソーダなどの基礎化学品の国内事業の構造改革をする時もそれはあった。
大阪など西日本で苛性ソーダを撤退し、東南アジアにシフトする時も、「全国で苛性ソーダNO1という座は守らないと」と、OBを中心に反対論が出て、販売特約店などからも、不満が噴出した。
しかし、変革を進めない限り、会社全体がもたないし、そうなると、「結果的に周りの人
に迷惑をかけてしまう」として、3年がかりで解決していった。
その時、島村氏は創業精神の本質は何だったのかと考え続けた。それは、「時代時代のリーディングインダストリーに素材を提供していくことで自らの成長を図る」ということ。
しかるに、外部のアナリストたちからは、「なぜガラス企業が化学をやっているのだ」という見方をされてしまう。
自分たちからすれば、ガラスも化学も需要者のニーズに応えてやっているのにという思い。そうした思いと外部からの見方とのズレをどう解消するか。
「それならば、ガラスメーカーということを1回シャッフルして、素材メーカーであることを再確認しようと。世の中が必要な素材を開発して提供していくというのが、もともとオリジンの創業精神の根本なんじゃないかと。わたしはそう思い、それを社内に言い続けたんです」
島村氏は祖業のガラスとは違う化学畑の出身。社内意識統一のため、社名変更にも及んだわけだが、これも「歴史あるガラス畑出身の社長だったら、できなかったと思います。わたしみたいなアウトローな人間だと、素材の会社だよねと。世の中が求めるもの、そういう素材を提供していくのがわれわれの使命なのではないかということを言い続け、3年位かかりました」
という島村氏の述懐。
事業構造改革の〝よすが〟となった創業精神。それを読み返して、最も印象に残ったのは、『易きになじまず難きにつく』という言葉。
この言葉の後に、それをサポートするメッセージが続く。
『人を信ずる心が人を動かす』と『世界に冠たる自社技術の確立を』、そして『開発成功の鍵は使命感にあり』である。
こうした創業精神と、『第2の創業』という気持ちで変革に臨んだ経営者としての覚悟。
事業構造改革に覚悟は不可欠だ。経営の原点を常に確認し続けることが自分たちの使命感を高めるということである。
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