2022-01-15

国境なき時代の企業の舵取り─不確実性の時代をどう生き抜くか?【ファーストリテイリング・柳井正】の国も企業も危機感が無ければ変革できない

ファーストリテイリング会長兼社長 柳井正



日本の座標軸をどう設定するか

「グローバルな人の結びつきとか、企業と企業の結びつきはますます強くなっていく」と柳井氏は強調する。

 コロナ危機にあって、感染症対策のため、一時的に海外からの渡航者の入国禁止や隔離政策が取られてきた。
 このため、分断が進んだかに見えるが、各国が手を携えてコロナ対策を取らなければならない現実が、『世界は1つ』という認識を深めることになった。
 国を閉じて、1国単位で対応策を立てようとしても、結局は、それは国民に〝負〟の影響を与えると柳井氏は次のように語る。

「日本に資源が全部あって、輸入しなくて済むのだったら、それでいいけれども、そうはならない。これから、僕はインフレが来ると思います。インフレになって、円安になって、輸入して、給料も上がらないとなると、どうしますか。(何もかも)国産でやるとしたら、国というものが成り立たなくなってしまう。そうなると、国民の生活が今よりもっとダウンするというふうに僕は思います」

 国と国の関係が分断、分裂の方向に向かうのでは、目ぼしい成果は得られず、プラスの影響は受けられないとして、柳井氏は続ける。

「それは、1国ではもうどの国でも成立しない。世界最強の米国ですら、米中対立の時でも中国からの輸入が143%(ジェトロ調べ、2021年上半期の中国の対米輸出額)になったということですよね。米国ですら1国では運営できないんですよ。日本は何の資源もない。人の努力と人間の能力だけで発展してきた国です。それを自国でやる、しかも遅れた技術でやる。そうした領域に人もいないのに、どうやってやるのかということです」

 国の立ち位置をどう測り、自分たちの視座、座標軸をどこに定めるのかという命題。
 あるべき国家像をきちんと見据え、そして、持続性(サステナビリティ)のある国の運営を図るということで、リーダーの責任は重い。

「そう、リーダーの人に未来志向がないんですよね。口では未来志向と言っているんだけど、個別具体策が全くないです。それを即実行しない」と柳井氏はリーダーの使命と責任を語る。

混迷期こそ、経営の原点を見つめ直す!

 今はまさに変革期。デジタル革命(DX)、グリーン革命(GX)が世界規模で進行し、そこへコロナ危機が重なった。
 企業はもちろんのこと、個人もどうこの変革期を生き抜くか─という命題を抱えている。
 柳井氏が1984年(昭和59年)、父親が経営する用品店を受け継いだのは35歳の時。以来、掲げているのが、『LifeWear(究極の普段着)』という考え。

 この『LifeWear』は国籍、人種、性別、年齢を超えた、あらゆる人のための服ということ。
 普段着(カジュアルウェア)だから、「世界中の人が気軽に購入でき、自分らしいライフスタイルをつくることができる服」という思いを、柳井氏はこの『LifeWear』という言葉に込めている。
「お客様のために服をつくる」ということの実践がコロナ危機で消費者に受け入れられる、21年8月期の大幅増益決算につながったと評価できよう。

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本誌主幹 村田博文

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