あらゆるものが変わっていく中で… 郷里・宇部から出発し、広島、大阪、東京へと進出。そして中国をはじめアジア市場を開拓し、さらには英国にも進出(2001)、米国・ニューヨークや仏・パリとファッションの本場にも拠点を拡大。このように新しい市場を次から次へと開拓してきた歴史。もし、東京で誕生した会社だったら、「今のような姿ではなかったかもしれない」と柳井氏は語る。
同社はカジュアルウェアで世界3位の座。1位のZARA(スペインのインディテックス
社)、2位のH&M(スウェーデン)を追う立場だが、2021年には時価総額で一時期、ファーストリテイリングがZARAを抜くという局面があった。
競争相手はカジュアルメーカーだけではない。国境はなくなり、競争相手もあらゆる業種からやって来る可能性のある時代。
GAFA(グーグルやアップルなど)などITプラットフォーマーと呼ばれる企業が突然ライバルとなるかもしれない。
柳井氏は「Global is local,Local is global(グローバル即ローカル、ローカル即グローバル)」という考え方を示す。
グローバル(世界)とローカル(地域)は隔絶したものではなく、融け合っている。
また、AIやIoTの技術の進展で、バーチャル空間とリアルな空間も混ざり合い、「融合している」という認識を示す。
そして、自らの事業形態については、「情報製造小売業」(Digital Retail Company)と規定。国も企業も、変革の時を迎えて、どう生き抜くか─という意識を持ち続ける柔軟な対応。
『諸行無常』─。仏教の根本思想で、万物は常に変化して、少しの間もとどまらないという
ことを意味する言葉。
「英語では、Everything is changing だと。偉い坊さんに聞いたら、あらゆるものが変わっていって、人間は死ぬんだと。だから人間は、死ぬんだったら、死ぬ前に何かやりたいと思うのが普通だと思うんですね」。
ファーストリテイリングはいろいろな試練や危機を乗り越えて、成長してきた。
「僕らはそういう意味で幸運だったと思うんですけど、ひょっとしたら、こういう事ができるのではないかと思っても、やらない限りそれはできない。できない理由を言うのは簡単で、ひょっとしたら、こういう事ができるという事に向かって努力する。それが必要だと思います」
柳井氏の新しい挑戦はこれからも続く。
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