2022-01-15

【株価はどう動く?菅下清廣氏に聞く】米国株に黄信号、コロナ対策に成功した日本に世界のマネーが集中?

欧米株を下落させる3つの売り材料


 引き続き、世界情勢は不透明、不安定な状況にあります。米中対立はさらにエスカレートしそうな雲行きです。バイデン大統領は各国に北京オリンピックの「外交ボイコット」を呼びかけていますし、中国政府による人権弾圧を理由に新彊ウイグル自治区からの輸入禁止法案が米議会で可決するなど、米国はかなり厳しく中国を押し込んでおり、欧州など先進国も同調の動きを見せています。

 これに対して、中国はロシアと提携して対抗しようとしています。まさに「冷戦構造」がエスカレートしており、世界の株式市場のリスクになっています。

 株価は波乱含みですが、一方で米国はバイデン大統領による史上最大の景気対策が行われています。それによって株価は一進一退となっているのです。

 また、不透明感に拍車をかけているのが、新型コロナウイルスの変異型・オミクロン株です。感染力の強さから一気に欧米に広がっています。

 国際情勢不安とオミクロンは、欧米の株価下落の要因になっているのです。

 さらにFRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の転換を始めました。テーパリング(金融緩和縮小)は2021年11月から始まっていましたが、量的緩和の終了時期を22年6月から3月に前倒しすることも表明しています。これだけの売り材料が揃うと株価は下落します。

 ニューヨーク株は「波高き相場」に入っており、「嵐の中の船」のような状況です。そしてニューヨーク株の動きを見ていると、テクニカル分析の手法である酒田五法でいう「団子天井」になりつつあります。つまり、高値を付けても直近の高値を大きく抜けないという状態です。こうなると、最後に下に放れて、大きな陰線が出て終わりということになります。

 まだ、その段階かはわかりませんが、要注意です。これまでは青信号でしたが、少なくとも黄信号が点灯していることは間違いありません。米国の株価が頭打ちになる可能性があります。

 加えて、バイデン政権はこれまで米国株の上昇を牽引してきた「GAFAM」などの巨大IT企業、それに続くテスラやネットフリックスなどを締め付ける政策、超富裕層への増税を打ち出してきています。これは米国の相場の勢いを削ぐものになり得ます。

 これまで快調に飛ばしてきたニューヨーク株が団子天井になり、年末年始から天井圏に入ってくる可能性があります。その時の目処は
20年3月のコロナショックの1万8213ドルから、21年11月8日の3万6565ドルまでの3分の1押しが3万ドルから3万400~500ドルですから、この水準まで下がる可能性は十分あります。

 これまで、ニューヨークダウに連動して上下していた日経平均ですが、必ずしも同じ動きではありません。

 それはなぜかというと、オミクロン株は日本では広がっておらず、むしろ感染者数が激減していること、FRBなどは金融政策を転換していますが日本銀行は金融緩和を継続していること、国際情勢不安は日本にも無関係ではありませんが、欧米ほど差し迫ったものになっていないことなど、欧米の株価を押し下げる悪材料が、日本株にはあまり作用していないのです。

 さらに岸田政権は今後、過去最大の景気対策を行います。ですから日本株は先進国の中で最初に反発し、出直ってくるのではないかと見ています。

 日本株の波動を見ると、20年3月のコロナショックから上昇して、21年3月と9月に高値を付けており、二番天井を付けた形になっています。当然調整をするわけですが、これが3分の1押し程度なら休息期間は短く、再び上昇するのも早くなります。

 3分の1押しはどこかというと2万6000円近辺ですが、9月14日の3万795円を付けた後の安値は12月3日の2万7588円で、その後株価は切り返してきています。これは3月、9月の二番天井を近く抜いてくるサインです。

 しかも、21年の日経平均の安値は5月13日の2万7385円が一番底、8月20日の2万6954円が二番底です。12月3日の2万7558円を当面の安値として株価が上昇するなら、綺麗な「逆三尊」、トリプルボトムを構成して、完全な底入れ型となり株価は、この後上昇する可能性が高まっています。

 先進国の中で日本だけがコロナ対策に成功していることは、今後株高につながる可能性があります。これまで欧米につられて下げて売られていた日本の成長株、DX関連で業績のいい銘柄に世界のマネーが流れ込み上昇すると見ています。これは楽観シナリオです。

 株価が上に抜けきらなかったり、調整が続くという中立、悲観シナリオもありますが、私は楽観シナリオの可能性が高いのではないかと見ています。

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