2022-01-20

【政界】本格政権へ自立目指す岸田首相 鍵握る2人の元首相との間合い

イラスト・山田紳



「世の中甘くない」

 岸田派と麻生派の間では「大宏池会」構想が長く取りざたされてきた。岸田政権の誕生を受けて合流を急ぐ考えは岸田にも麻生にもないが、両派と谷垣グループが連携すれば最大派閥の安倍派に匹敵する勢力になる。さらに岸田は衆院選後、幹事長の茂木敏充とも麻生を交えて会合を重ねている。

 旧経世会の流れをくむ平成研究会は党参院議員会長を務めた青木幹雄の影響力が今も残り、前会長の竹下亘の死去に伴う後継選びはすんなりいかなった。しかし、岸田が茂木を幹事長に抜てきしたことで「茂木会長」の流れができ、「青木さんも最後はしぶしぶ了承した」(永田町関係者)とされる。

 茂木派は昨年12月、2人が新たに入会して53人に増え、麻生派と並ぶ党内第2派閥になった。ただ、茂木派議員は「麻生派を追い抜くつもりはない。そこは幹事長も配慮している」と明かす。故小渕恵三以来の同派からの総裁誕生に向け、茂木自身も戦略を巡らし始めたようだ。

 そうした中、12月13日に茂木派の政治資金パーティーが東京都内で開かれた。来賓の岸田は「宏池会は『お公家集団』、政策
には強いが政局には弱いと揶揄されてきた。政策にも政局にも強い宏池会を目指したいが、世の中甘くない。引き続き平成研にしっかり支えていただかなきゃいけない」と茂木派を持ち上げた。

 外交面でも岸田と茂木の足並みはそろっている。

 高市や日本ウイグル国会議員連盟会長の古屋圭司らは12月17日、党本部で茂木と面会し、中国の人権侵害を非難する国会決議を臨時国会中に採択するよう求めた。しかし、茂木は「決議の内容はいいが、北京冬季オリンピックに政府関係者を派遣するかどうか世論が注目している中でタイミングがよくない」と拒否。高市らの説得にも最後まで首を縦に振らず、通常国会に続いて採択は見送られた。その時点で政府は外交的ボイコットを公式に認めておらず、茂木が党側の圧力を押しとどめた形だ。

 前首相の菅義偉も再始動した。新型コロナウイルス対策が後手に回って内閣支持率が急落し、衆院選を前に総裁再選の道が阻まれたものの、退陣後に新型コロナの新規感染者数は激減し、再評価する声が出ている。

 総裁選のいきさつから菅と岸田には溝がある。そのため、菅が派閥を結成して二階派や森山派(旧石原派)と組むのではないかという臆測は絶えない。安倍は12月3日のインターネット番組で「菅さんが派閥を作ろうと思えば簡単に結成できるのではないか」と述べた。その前日に経済産業相の萩生田光一や前官房長官の加藤勝信と一緒に菅と食事をしたことも明かし、良好な関係をアピールした。

 間もなく、菅は訪問先の沖縄県で、脱炭素やデジタル化、少子化対策などの課題を挙げ「理解をいただいている同志のみなさんと力を合わせて実現していきたい」と呼応した。菅を支援する若手議員でつくる「ガネーシャの会」などが念頭にある。

 ただ、首相在任中に菅が窮地に陥った際には、そうした無派閥議員グループの限界が露呈した。菅は派閥結成に消極的との見方は党内に根強くあるが、失敗を教訓に慎重にチャンスをうかがっているようにも映る。

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