2022-01-20

【政界】本格政権へ自立目指す岸田首相 鍵握る2人の元首相との間合い

イラスト・山田紳



過去には首相交代も

 寅年政変説には根拠がある。12年前の2010年は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡る混乱で社民党が民主党などとの連立政権から離脱し、当時の鳩山由紀夫首相と民主党の小沢一郎幹事長が6月に辞任した。後継の菅直人首相のもと、翌月の参院選で民主党は大敗し、連立を組む国民新党と合わせても参院の過半数を割り込んだ。これを境に、民主党政権は発足から1年足らずで下り坂に転じた。98年は金融不況が日本を襲い、参院選での自民党惨敗を受けて橋本龍太郎内閣が総辞職している。

 安倍政権時代の16年と19年の参院選では、政権幹部が衆院選との同日選をちらつかせて求心力を維持した。しかし、衆院選が終わったばかりの今回、岸田はこの手法を使えない。政権交代に直結しない分、有権者が参院選で与党におきゅうを据えやすいとも言える。7月で9カ月になる岸田政権が掛け値なしに評価されるわけだ。

 最大の懸案は今年も新型コロナだろう。変異株「オミクロン株」は強い感染力を持つとされ、今冬の「第6波」に専門家は警戒を呼びかけている。デルタ株より重症化しにくいという研究結果はあるものの、予断を許さない。

 岸田は昨年12月、医療従事者や高齢者ら計3100万人の3回目のワクチン接種を「2回目接種から8カ月後」から最大2カ月前倒しする方針を表明した。前倒しのため、国にあるモデルナ、ファイザー両社製のワクチン700万回分を追加配送し、自治体に残っているファイザー社製とモデルナ社製の計890万回分の在庫活用も求める。供給面の問題から、前倒しの対象者を絞らなければならなかったのが実情だ。首相官邸幹部は「自治体がワクチン不足で混乱しないようかなり意識している」と苦悩を語る。

 政権発足から間もないとはいえ、政策決定のつたなさも目に付く。18歳以下への10万円相当の給付は、自民、公明両党幹事長の昨年11月の協議で「年内に現金5万円、来春にクーポンで5万円」の枠組みが決まったが、その後、クーポン配布に967億円の費用がかかることが判明。自治体の猛反発を受けて、政府は「現金5万円を2回給付」「現金10万円を一括給付」も認める方針に転じた。

 公明党はもともと全額現金給付を主張していたが、バラマキ批判を恐れた自民党と財務省が半分をクーポンにするよう押し返した経緯がある。困窮者支援と消費喚起を組み合わせた妥協の産物だった。しかし、給付を3パターンに広げたことで、政策目的は一層あいまいになってしまった。「過ちては改むるに憚ること勿れ」(論語)と言われるが、「ぶれ」を繰り返すようだと政権の足元は揺らぐ。

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