2022-01-20

【政界】本格政権へ自立目指す岸田首相 鍵握る2人の元首相との間合い

イラスト・山田紳

※2022年1月12日時点

新年が始まった。首相の岸田文雄にとっては自らの足場を固める重要な年になる。夏の参院選さえ乗り切れば当面は国政選挙がなく、ショートリリーフという下馬評を覆して本格政権が視野に入ってくる。山積する内政・外交の課題に「岸田カラー」を出しやすくなるだろう。ただ、寅年の政治は混乱するというジンクスがあり、岸田も油断はできない。自民党内の実力者は互いにけん制し合いながら、万が一に備えて岸田政権を値踏みしようと目を光らせている。

「再建」巡る綱引き

「総裁選のいきさつがある。最初から支持してくれた麻生さんとは違うよ」。岸田に近い自民党のベテラン議員は、元首相・安倍晋三に対する岸田の思いを推し量った。数学に例えると、岸田、党副総裁の麻生太郎、安倍を三つの頂点にした三角形の各辺の長さが今後どう変わるかが、2022年の政界を占う重要なポイントだ。

 昨年末、象徴的な場面があった。12月7日に開かれた自民党財政健全化推進本部の役員会で、最高顧問の麻生は「政調会長の下に同じく財政に関する機関が一つできた。そちらの最高顧問が安倍(元)総理で、こちらが麻生太郎。二つをおもしろく書いてやろうと考えるのがマスコミだ。党内でも安倍と麻生は近ごろ(関係が)おもしろくないとか(言う人がいる)。そういった方々のエサになるのは断固避けねばならん」とあいさつした。会合には岸田も出席していた。

 その少し前、党政務調査会に財政政策検討本部が発足した。積極財政論者として知られる西田昌司参院議員を本部長に、安倍が最高顧問、政調会長の高市早苗が顧問を務める。安倍が昨年9月の総裁選で高市を全面支援したのは周知の通りだ。

 2つの本部の成り立ちを整理しておく。もともと党政調には財政再建推進本部があった。高市は会長就任後、それを財政政策検討本部に衣替えした。「再建」の文字を消したことからわかるように、参院選に向けて歳出圧力を強めるのが狙いだ。党内では積極財政派が勢いを増している。「真水」で31・6兆円の経済対策を盛り込んだ21年度補正予算には、30兆円超を求めた安倍らの意向が色濃く反映された。

 危機感を強めた党内の財政再建派は巻き返しを図る。元財務相の額賀福志郎が岸田のもとに駆け込み、財政健全化推進本部の設置が決まった。しかも同本部は総裁直轄の組織で、財政政策検討本部より格上。それを知った高市は「首相官邸が過剰反応した」と周囲に不快感を隠さなかったという。

 もちろん「岸田・麻生」対「安倍・高市」という単純な図式ではない。麻生と安倍の盟友関係は続いている。ただ、岸田が党の財政政策を高市任せにしない姿勢を示したことは、背後にいる安倍へのメッセージでもあるだろう。岸田は「年明け(22年)から財政健全化目標を検証する」と明言している。

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