2022-02-08

日本商工会議所会頭・三村明夫の新・資本主義論「中小企業の果実は大企業に吸い取られている現実を」

日本商工会議所 三村 明夫会頭

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「強く、豊かな国でなければ、有事に…」

 コロナ危機はまだまだ続く。
 経済三団体の各トップは年頭所感で、これからの針路について、自分の思いをそれぞれ述べた。
 三村氏はコロナ禍の体験を踏まえて、「強く豊かな国でなければ、有事に国民を守ることができないことを再認識した」と強調。その上で、経済成長の課題として、「日本の雇用の7割を担う中小企業の生産性向上が重要」という考えを表明。

 経団連会長の十倉雅和氏は、岸田政権の『成長と分配の好循環』について、「まずは成長が重要だ」と指摘。その上で、「企業こそが成長と分配の担い手」という認識を示し、政府と協力しながら課題解決に向かうとした。

 経済同友会代表幹事の櫻田謙悟氏は過去30年間、日本経済が停滞した原因を「社会を一変させるようなイノベーションを生み出せなかった」とし、企業経営者に自問自答を求め、問題解決に当たろうと呼びかけた。

 3人のトップは、国のあるべき姿、企業の役割と使命、そして個人の生き方・働き方に言及。改めて、国、企業、そして個人の三者連携とそれぞれの存在意義が問われているということだ。

日本の強さと弱さ

「コロナ禍で多くの人達が、自分たちの幸せは何なのだろうか、企業は何のために存在するのだろうかと考え始めました。最近、こうした企業の存在意義や価値を見直す議論が多いですが、国が豊かでないと国民の命も生活も救えません。これが再認識されたわけですから、様々な社会課題を解決しながら、もう一度日本という国を豊かで強い国にしていかなければなりません。その実現に向けて議論するのが、新しい資本主義だと解釈しています」と三村氏は語る。

 コロナ危機は日本の良さと弱さを同時に露呈。良さは国民の衛生意識の高さ。マスクの着用や手洗いの励行など、衛生意識の高さもあって、欧米各国と比べて、人口当たりの感染者や死亡者の数は、はるかに低い。
 一方、新型コロナ感染の初期、マスク不足で国民の不安心理が一気に高まった。マスクは平時、中国などアジア諸国でつくられ、日本は輸入していた。有事になるや、中国を始め各国は自国民への配布優先措置を取った。

 他の医療用機材や物資も同様の問題を抱える。平時は何もないから、コスト優先一本槍で経済運営をしてこられたが、有事にはそうはいかない。
 危機管理体制が全く整っていないことに、日本はハタと気づかされた。経済が危機管理策と絡まってくる瞬間である。

 それを踏まえて、「日本という国は豊かで強い国でなければいけない」と三村氏は訴える。
では、どうやって、『豊かで強い国』をつくり上げていくか─。

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本誌主幹 村田博文

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