2022-02-08

日本商工会議所会頭・三村明夫の新・資本主義論「中小企業の果実は大企業に吸い取られている現実を」

日本商工会議所 三村 明夫会頭

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資本主義が修正されて来た歴史の中で…

 資本主義に完成形はない。時代と共に修正されてきたというのが資本主義の歴史。
 1989年の『ベルリンの壁』崩壊、1991年の旧ソ連邦解体で社会主義陣営は一気に崩れ去り、資本主義対社会主義の冷戦に終止符が打たれた。資本主義の勝利とされたが、その資本主義にも課題は多い。
 論争も多々ある。古くは1891年時のローマ法王レオ13世から、『資本主義の弊害と資本主義の幻想』という回勅が出された。

 それから100年後の1991年に、時の法王、ヨハネ・パウロ2世から出された回勅には、『社会主義の弊害と資本主義の幻想』とある。その3カ月後に旧ソ連邦の解体である。
 資本主義も社会主義も、幻想(Illusion)と弊害(Abuse)の間を行ったり来たりしてきたという歴史的現実。時の法王もその現実を直視し、世界に啓示を与えてきた。
 その1991年から30年が経つ今、新しい資本主義への模索が続く。
「ええ、世界全体でも一時期、新自由主義、市場原理主義が相当にはやりました。日本だって、モノ言う株主の意向をもっと聞かなければいけないという論調が多かった。しかし、そうした株主至上の資本主義ではなくて、全ステークホルダー(利害関係者)を意識する考えが強くなっています」と三村氏。

 渋沢栄一に話を戻せば、渋沢は『論語と算盤』を著わし、経済(算盤)に道徳や倫理(論語)が必要と、世の中を啓蒙してきた。『国富論』のアダム・スミスも道徳を重要視してきた。
 本来あるべき姿を追求する勢力があって、もう一方に短期的な利益を追う人たちという2つの流れ。
「日本の経済体制の中にも株主至上主義とステークホルダー主義の2つの考え方があり、時代によって双方を揺れ動いてきました。最近のダボス会議では企業は社会にもっと貢献すべきだとの意見が、欧米の参加者から出てきています。日本も見習うべきだという声もありますが、日本は昔から、そういう考え方が既にあったということです」

 ともあれ、新しい資本主義をどう成長、発展させていくか。産業界を〝石垣〟に喩えて、「大きな石(大企業)、中小の石(中小企業)の組み合わせで、堅固な石垣がつくられる」という石垣論が日商(東商)にはある。日本経済の礎石を担う中小企業の生産性アップこそが肝要という三村氏の信念である。

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本誌主幹 村田博文

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