2020-12-25

楽天、スタディストなどIT企業が小売業のDXに参入

紙ではなくタブレットの説明書に従い、本部からの陳列指示を実行。作業を終えたら、写真を撮って本部に報告する

コロナ禍でネットスーパー市場が再注目される中、楽天が西友の株式を取得、さらに小売りのDXを支援する新会社を設立。また、マニュアルのクラウドサービスで国内シェアトップのスタディストも店舗の販促効果を高めるサービスを開始。IT企業が続々、小売業の生産性向上サービスの提供を始めている。


 楽天とKKRが西友の株式を取得した。楽天は20%、KKRは65%の株式を取得し、ウォルマートも引き続き15%の株式保有を継続する。
 もともと楽天と西友は戦略的提携を結び、ネットスーパー事業「楽天西友ネットスーパー」を手掛けているが、コロナ禍で楽天のネットスーパー事業も20年10月の流通総額が前年同月比55・3%増と大幅な伸びを示す。楽天は西友に出資し、ネットスーパー事業を強化する形だ。

 また、楽天は西友への出資と同時に、小売店のDXを支援する新会社「楽天DXソリューション」を21年1月に設立すると発表。AIを活用した需要予測で在庫や価格設定の適正化を図ったり、スマートフォンを活用したレジなし決済、オンラインとオフラインの購買データを融合させ、1人ひとりに合わせた販促などを行っていく。

 ネット通販から金融、通信まで楽天が提供する様々なサービスで構築される〝楽天経済圏〟では、既にデータとAIを活用したマーケティングが顧客囲い込みの原動力になっている。ここで得たノウハウを新会社を通じ、出資先の西友だけでなく、他の小売業にも提供していく方針だ。

「せっかくテレビCMを打ったのに店頭に商品が並んでいない」ーー。こう嘆くのは某食品メーカーのマーケティング担当部長。

 こうした本部と現場のコミュニケーション不足による機会損失をなくすため、マニュアル作成・共有プラットフォーム『Teachme Biz』を展開するスタディストも新サービス『HansokuCloud』を発売。

 本部が店舗に販促施策を指示しても、メールに添付したエクセルでの指示書はわかりにくく、日々の業務に追われ、施策を実施できない店舗も多い。そこで、本部からの指示がタブレットに直接届く仕組みを作り、動画と画像でビジュアルで指示を理解できるようにした。この形であれば、店長が直接指導しなくても、店員がタブレットをもとに自分で棚づくりができるわけだ。

 まずは小売店向けのサービスとして展開するが、2021年5月以降からは、消費財メーカーへのサービスも開始する予定。

 スタディストはマニュアルのクラウドサービスで利用社数トップ。「マニュアルサービスですでに多くのファンやパートナーがいるので、今後も用途特化型のサービスを開発し、国内そして海外にも広げていく」と社長の鈴木悟史氏は語る。

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