2022-02-08

【孫氏が後継者に望むもの】ソフトバンクグループ、後継者の1人と目されたクラウレ氏が退任

孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長


 約1150億円の報酬を要求し、孫正義氏と衝突――。

 米ブルームバーグ通信がこう報じた翌1月28日、ソフトバンクグループは副社長執行役員最高執行責任者(COO)のマルセロ・クラウレ氏の退任を発表した。

 クラウレ氏は南米ボリビア出身の起業家。2014年、ソフトバンクがクラウレ氏が起業したブライトスターを買収。その後、クラウレ氏はCEOとして米スプリントを再建し、20年にはTモバイルとの統合を実現。

 19年からは経営危機に陥ったソフトバンク・ビジョン・ファンド(VF)の出資先・ウィーワークの会長として同社の立て直しに尽力。孫氏から与えられる課題を次々とクリアし、後継者の1人とも目されていた。

 だが、近年のソフトバンクGは孫氏が「情報革命の資本家、ビジョンキャピタリストとして、人々を幸せにしていきたい」と語るように“事業会社”ではなく“投資会社”としての側面を強くさせている。

 クラウレ氏も19年からは中南米ファンドの責任者として投資事業を手掛けているが、VFに比べると、規模の小さいファンドになっている。

 近年、投資会社として、孫氏が強調してきたのが「継続して利益が出る仕組みづくり」。専門分野別、地域別など専門特化のチームを作り、投資先の分析を進めている。孫氏も「インセンティブシステムも含めて、VFの仕組み作りに携わっている」。

 この仕組み作りに大きく関わってきたのが、VF創設事から事業に携わる副社長執行役員のラジーブ・ミスラ氏。

 ソフトバンクGは20年にクラウレ氏、ミスラ氏、佐護勝紀氏の3名を同時に副社長に任命したが、いまも残るのはミスラ氏のみとなった。

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 昨年6月に行われた株主総会で株主から「後継者の考え方を聞かせてほしい」と質問が飛ぶと、孫氏は「業務執行と長期ビジョンの策定は別なので、副社長イコール後継者とは思っていない。若い人、外からの人、投資先の経営者も含めて、いろんな候補の中から選んでいきたいと思っている」と答えた。

 60代で引退を公言してきた孫氏だが、最近は「資本家なら69歳を過ぎても社長をやっているかもしれない。ただ、69歳前に、ある程度目星をつけて、経営のカジ取りを徐々に引き継いでいかねばならない」と語っている。

 孫氏が後継者に求めるハードルも高い。例えば、VFの経営陣は、孫氏からファンドへの資本参加を求められている。

「VFはリスクなしの投資インセンティブは1円もいただいていない。リスクを取って共同出資して、利益を得る。わたしはリスクを取りながらやっていく(孫氏は個人として26億ドル投資)。わたしの後継者も、リスクを取りながらリターンを得ると。この仕組みをバージョンアップさせながら、ソフトバンクの経営の文化として残していきたいと思っている」

 規模も投資のあり方も他に類を見ない形で進化するVF。孫氏の現役が延長されるにつれ、後継者選びの難易度も増している。

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