2022-03-01

【外務省】佐渡金山の『世界遺産』推薦巡り 韓国への対応に頭悩ます

対韓国外交の在り方をめぐり、外務省が揺れている。騒動のきっかけは、文化審議会が世界文化遺産の国内推薦候補に選定した「佐渡島の金山」をめぐる問題だ。

 同省は早い段階から官邸にユネスコへの推薦を見送るよう進言していた。韓国が金山で朝鮮半島出身者らに「強制労働があった」と主張したことや、歴史的な文書などを登録する「世界の記憶(世界記憶遺産)」をめぐり、当事国の異議申し立てを認める制度改革を日本が主導したことを踏まえ、「他国間に論争のある案件を日本が推薦したら、国際社会の理解が得られない」と見立てたからだ。

 岸田文雄首相も、一時期は同省の意向を受け入れる姿勢をみせたが、安倍晋三元首相らから「『強制労働』という虚偽の主張に毅然と対応してほしい」などと求められ、最終的に推薦を決断した。

逆に、政府与党からの批判が集まったのが外務省だ。当初、官邸側に「地元の新潟県も推薦見送りに納得している」などと事実と異なる情報を流していたことも分かり、岸田首相の激しい怒りを買った。

 同省幹部は「推薦しても登録を勝ち取る可能性はほとんどない。3月の韓国大統領選があることも踏まえ、冷静な対応をした方が得策と判断した」と打ち明ける。外相を5年以上務めた岸田官邸ともあうんの呼吸で外交に臨めるとの自負もあったが、今回の一件で若干すきま風が生まれた。

 自民党からは「外務省の事なかれ主義がぶり返した」とやっかみも受ける始末。来年夏のユネスコの最終判断に向け、今後は登録を勝ち取るためのロビー活動が大切になる。別の省幹部は「不必要に重い宿題を抱えてしまった」と頭を抱える。

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