2022-03-08

【オリックスってどんな会社?】オリックス社長・井上亮の変化対応論「多様なポートフォリオ戦略をいかに作るか」

井上亮・オリックス社長兼グループCEO

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金融サービスの領域で新事業領域を開拓、拡大し続けて、いわばコングロマリット化したオリックス。最近は投資銀行業務の色彩も濃くなっているが、今回のコロナ危機下で2022年3月期も増収増益を見込む。投資の多角化・多様化戦略について、「間違っていなかった」と社長の井上亮氏は総括、そして今後は「ポートフォリオの入れ替えをしながら、さらに収益率を上げていく」という戦略。単純にアセット(資産)を増やすだけでは意味がなく、「あくまでも効率が大事」と経営の基本軸に『効率』を据える。世界的な超金融緩和も米FRB(連
邦準備制度理事会)の政策金利引き上げで終止符が打たれ、今後、金利上昇局面を迎える。ドル高・円安などの為替動向、資源エネルギー価格上昇、さらにウクライナ、台湾問題など地政学リスクの高まる中、グローバル経営をどう進めるか。環境激変の中、井上氏の「臨機応変」経営とは─。
本誌主幹
文=村田 博文


【画像】北九州市・響灘の「ひびき灘石炭・バイオマス発電所」

要はポートフォリオをどう構築するか


「今回のコロナ危機で、今の経営のやり方で正解だったなと。(業績は)悪いときもあるし、いいときもある。多様性のあるポートフォリオ管理ができていますから、結果的に成功だったと思っています」

 オリックス社長・井上亮氏は自分たちの経営形態についてこう語る。

 金融・サービスを中心に、銀行、信託、生保、カード、そしてエネルギー、不動産開発と同社の事業は多岐にわたる。1つのコングロマリット(複合経営)という見方もできる。

 同社の経営については、「コングロマリット・ディスカウント」とか、「よく分からない会社」などという評も最近までよく聞かれた。

 業績はコロナ危機前までの年間純利益は3000億円台を維持してきたが、コロナ危機1年目の2021年3月期は1923億円と3割の減益となった。

 今期(2022年3月期)は、売上高2兆3000億円台で、最低3000億円以上の純利益を確保する見込み。

 今年1-3月期の業績いかんによるが、さらに上積みされ、4000億円台を窺うような勢いだ。株式の時価総額も約3兆2000億円台という勢い。

 コロナ危機は自分たちの活動を見つめ直す好機という認識を井上氏は示す。

 とかくコングロマリットには、〝コングロマリット・デメリット〟がささやかれる。事業が多角化して、全体像がなかなか掴みにくいため、〝デメリット〟が言われがち。そうした見方を、コロナ危機2年目(決算期は22年3月)で払拭した形だ。

 事業の多角化・多様化は1つの成功例という認識なのか?「成功例というか、間違ってはいなかったと。今後はポートフォリオの入れ替えをしながら、さらに収益率を上げていくというのが、次のテーマです。単純にアセット(資産)をどんどん増やすだけでは意味がありませんから、あくまでも効率が大事ですね」

 コングロマリットに付きまといがちなデメリット論が寄せられたときは、経営のトップとしてどう受けとめてきたのか?

「わたしはあまり気にしなかったです。いろいろな投資家と会うと、例えば『どこそこのリース会社には戦略があるが、オリックスにはない』と言うわけです。5時間もらえれば1つずつ戦略を述べてもいいですよと。投資家が比較で挙げた会社はリース会社ですから、リース会社の戦略があり、示しやすい。我々はリース事業といっても、全体の10%ぐらい。すべてのセグメントの戦略を述べるから、その代わり5、6時間は必要だと言ったら、先方は黙ってしまいましたがね(笑)」

 オリックスは1964年(昭和39年)の創業で、57年余の歴史。創業時は第一回東京五輪が開催されるなど、日本は高度成長の真っ只中。企業の資本効率を上げるためにと、〝リース〟という事業が日本にも導入され、オリックスの前身、オリエント・リースは発足した。

 商社の日綿実業(その後、日商岩井と統合し、現双日)と三和銀行(現三菱UFJフィナンシャル・グループ)の両社が主軸となり設立されたのがオリエント・リースである。

 その社名の通り、リース会社として発展し、航空機リースや船舶リースなどに領域を広げ、幅広く日本の産業発展を支える役割を果たしてきた。

 その後、同社は事業を広げ、空港運営、旅館・ホテルから水族館、さらには木質バイオマス発電所の運営まで、その領域は多岐にわたる。

 今や、祖業のリースは全体(売り上げ2兆数千億円規模)の10%以下に過ぎない。

 三菱HCキャピタル(三菱UFJ系)、東京センチュリー(伊藤忠商事系)などのリースを本業とする会社とは違って、業務内容は実に多角化・多様化。

 オリックスと社名変更したのは1989年(平成元年)のこと。金融サービスを中心に、独創性のある事業を開拓していくということで、柔軟性、多様性を意味するアルファベットの『X』を取り入れる形で、『オリックス(ORIX)』という社名を採用したという経緯。

 以来、33年近くが経つ。それでも、投資家を含め、「事業内容がよく分からない」と言われてきた。

 そういう状況を踏まえて、井上氏は「ディスクロージャー(企業情報の公開)が大事で、それに努めていく」と強調する。

 ただ、事業内容が分かりかけると、「ことに海外の投資家からは、この情報が欲しい、あれが欲しいと際限なく、問い合わせが寄せられるんです」と井上氏は苦笑いしながらも、IR(Investor Relations、投資家への事業説明、広報活動)に注力していきたいと語る。


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本誌主幹・村田博文

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