2022-03-14

【脱炭素の時代】5年で売上げ3倍 東海カーボンは、なぜ成長しているのか?

長坂一・東海カーボン社長

「社長就任後、5つのM&Aをしてきました」─。1918年創業の老舗企業・東海カーボン社長の長坂一氏はこう語る。脱カーボンの時代に事業を拡大。とかく悪者にされがちなカーボンだが、サステナブルな社会の実現になくてはならない素材だ。100年続いた事業の改革を、どう成長につなげてきたのか─。
本誌・北川 文子 Text by Kitagawa Ayako


鉄、タイヤ、半導体、車…
成長するカーボン事業

「4つのメイン事業があり、いずれも今後、成長していくと見ております」─。

 こう語るのは東海カーボン社長の長坂一(はじめ)氏。1918年の創業以来、カーボンで世の中に貢献。脱カーボンの時代でも成長を遂げ、長年1000億円前後だった売上規模を倍増させている。

 2016年度決算は売上高886億円、営業利益11億円。それが、18 年度には売上高2313億円、営業利益730億円と約3倍に拡大。

 この急成長をカジ取りしてきたのが、15年に社長に就任した長坂氏だ。

 長坂氏は、慶應義塾大学商学部卒業後、1972年東海電極製造(現・東海カーボン)入社。

「主に黒鉛電極とカーボンブラックと原料に従事。主要製品の営業をやってきた」プロパーだ。

 社長に就任すると「『今のままではどうにもならない。構造改革をせざるを得ない』と意識改革も含めた構造改革を進めてきた」。

 社長就任直後は経営基盤を固めるため、徹底的な合理化を推進。その結果、15年度1049億円あった売上高は16年度に886億円、営業利益は41億円から11億円まで縮小。だが翌17年には売上高1063億円、営業利益111億円に急回復させた。

「自分でも付いているなと思うのですが、17年後半から経済がアップトレンドで動き始めた。16年の1年間で膿を出して身軽になり、17年の後半から時流に乗れた」と振り返る。

 そして「約100年近く黒鉛電極とカーボンブラックの2本立てで走ってきたが、ポートフォリオを拡充」していった。

 東海カーボンの主力事業は「黒鉛電極」「カーボンブラック」「ファインカーボン」「精錬ライニング」の4事業。それに「工業炉関連」、摩擦材や負極材などの「その他」事業が加わる。

「黒鉛電極」は鉄スクラップを電気炉で溶かし、リサイクルする際に必要な消耗品。

 鉄は〝高炉法〟と〝電炉法〟で作られるが、電炉法は高炉法に比べ、CO2の排出量が約4分の1。大手製鉄メーカーも脱炭素の流れで高炉法から電炉法への切り替えを進めるなど、「カーボンニュートラルの関係で中長期で見るとかなりポテンシャルが高い事業」だ。

「カーボンブラック」は主にタイヤに使われる素材。使用量はタイヤの重さの約3割を占め、耐久性を10倍近く高められる必要不可欠な素材だ。

「ファインカーボン」は半導体などに使われ、旺盛な半導体需要があり、「精錬ライニング」はアルミニウム精錬の効率化に使われる消耗品で「クルマの軽量化でアルミ製品の需要が増え、成長が見込まれている」。

「黒鉛電極」「カーボンブラック」」「ファインカーボン」は古くからある既存事業だが、「精錬ライニング」は19年に参入した新規事業。

 長坂氏はM&Aで既存事業の強化と新規事業育成を推進。〝両利き〟の経営で会社を成長させてきた。

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