2022-03-24

【動乱のウクライナ情勢】「サハリン」資源開発で国内エネルギー業界が苦慮

ロシアのウクライナ侵攻に対し、日本は米英欧諸国とともに金融・貿易制裁措置に踏み切った。だが、「西側」の間でも対ロシア強硬姿勢で足並みをそろえるのは容易ではない。

 背景にあるのは、ロシアが原油、液化天然ガス(LNG)、レアメタルといった資源の産出国であり、制裁への報復措置をちらつかせていることだ。日本は、官民で投資したサハリン沖の原油・LNG開発事業への対応が今後の焦点となる。

 ロシアのサハリン開発事業を巡っては、LNG中心の「サハリン2」プロジェクトに約3割を出資する英シェルが3月初旬、「合弁を解消して撤退する」と表明した。続いて、原油を開発する「サハリン1」に約3割を出資する米エクソンモービルも撤退手続き開始を表明。いずれもロシアのウクライナ侵攻への抗議の形を取っており、「英米政府と協議した上での実質制裁だ」(外交筋)とみられている。

 日本企業は伊藤忠商事と丸紅、石油資源開発などが「サハリン1」に間接出資する他、三井物産と三菱商事が合計2割強を「サハリン2」に出資している。いずれもロシアでの権益確保には政府が強く関与しており、日ロ経済協力の象徴として、日本の原油、LNGの安定調達の要にもなるとされていた。

 シェルとエクソンの撤退表明は「急激なスピードで決まった」(経済産業省関係者)とされ、政府側も判断に苦慮している。

 特に、サハリン1には政府系の石油資源開発が出資しており、「西側諸国の制裁の足並みを崩したとみられる恐れもある」(外交筋)ためだ。ただ、民間主体の開発から日本勢が速やかに撤退した場合、ロシア産のLNGや原油の調達が止められる可能性も否定できない。

 関係者によると、政府と関連企業は3月初旬以降、サハリン開発事業への対応を協議しているが、「即時撤退」には慎重な姿勢。ただ、「こうした点を米英のエネルギー企業が問題視する恐れも否定できない」(エネルギー業界関係者)とされ、政府は対外的にロシア制裁を堅持する姿勢を明確にしながら、どのように実を取ってくのか、難しい舵取りを迫られている。

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