2022-03-23

【経団連会長・十倉雅和】の「新・企業社会論」GAFAの物真似ではなく、日本は日本の生き方を

日本経済団体連合会 十倉雅和 会長

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GAFAの生き方に疑義や批判も出る中で…

 それにしても、なぜ日本にGAFAが生まれないのか?
 ITプラットフォーマーと呼ばれる『グーグル(親会社はアルファベット)』、『アップル』、
『フェイスブック(META に社名変更)』、『アマゾン』にマイクロソフトに加えて、GAFA
Mとも呼ばれる。
 アップルの株式時価総額が3兆ドル(3百数十兆円)を超え、GAFAだけで、日本の東証1部上場(2200社弱)の時価総額合計(700兆円)を優に上回る。
 市場支配力で圧倒的な力、ケタ違いの力を見せるGAFAだが、課題もある。

「彼らはデジタル技術を利用して、彼らが作ったルールの下で個人のデータを扱い、利用し
て、あっという間に今の地位を築いた。それは、アメリカの政治学者、イアン・ブレマーさんが指摘しているように、GAFAがガバナンスのあり方、社会性とか、事業運営のあり方や手段の是非が問われているということだと思います」
 イアン・ブレマー氏は、「彼らはデジタルの世界で、誰からも脅かされることのない完全な〝権力〟を手に入れている」という認識を示す。そして、最も危惧すべきは、「国家安全保障上の問題」とし、「彼らが手にしているデータは常にサイバー攻撃の脅威にさらされている」と課題を指摘する。



 公平・公正、社会性をどう担保していくかということ。
「日本がこれからGAFAを目指すというのは、僕は日本のやり方ではないような気がします」と十倉氏は語る。
「データを活用してやるのであれば、日本はいいリアルデータをいっぱい持っているんです。病気でも、災害でも、モノづくりだってそうです。そうしたリアルデータをフルに活用していけばいいと」

 そのようなリアルデータ活用を担うスタートアップが生まれやすい環境やインフラをどう作るかという課題である。

新しい資本主義を日本から発信

 今は、グレート・リセット(刷新)の時代だといわれる。ESG(環境、社会、統治)やSDGs(持続性のある開発目標)の考え方もそうだし、日本の『新しい資本主義』づくりもその一環だ。
『成長と分配の好循環』を目指す岸田文雄首相は、『新しい資本主義実現会議』を設置。
15人の委員の1人として、十倉氏も三村明夫氏(日本商工会議所会頭)や櫻田謙悟氏(経済同友会代表幹事)らと共に参加し、討議に加わっている。

「アメリカ流資本主義の導入に一生懸命だった勢力もあって、ちょっとそれに引きずられ過ぎたと思うんですけど、やはり企業は社会的な存在であって、従って社会のお役に立つ、社会に認められないと存在できないというのは当たり前の話。シェアホルダーキャピタリズム(株主資本主義)からマルチホルダーキャピタリズムへというのは自然な流れ。何も欧米に言われて、それを導入するのではなくて、日本には昔からあった話だと僕は思っています」

 近江商人の『三方よし(売りよし、買いよし、世間よし)』の思想。江戸期に〝町人(商人)の哲学〟を打ち立てた石田梅岩のいわゆる『石門心学』の『実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり』の思想。さらには十倉氏の所属する住友グループには『自利利他公私一如』の思想が受け継がれている。

 マルチホルダーキャピタリズム─。株主だけではなく、顧客、取引先、従業員、地域社会、すべての関係者との対話、共生を目指す思想は、もともと日本で育まれたもの。
「日本からもっと発信しなければと考えています」と十倉氏。
 日本の企業はもっと頑張れるはずである。

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本誌主幹 村田博文

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