2022-03-28

【日本バス協会】会長が訴える「新型コロナ対策も3年目に入り、『人流抑制』は合理的なのか」

清水一郎・日本バス協会会長(伊予鉄グループ社長)

「人流抑制」に疑問─。交通機関は、人流が仕事です。このままでは公共交通機関が持ちません。これまで国を挙げて人流が止められてきました。コロナも当初は、暗中模索で仕方なかったかもしれません。

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 しかし、コロナ対策も3年目に入り、ワクチン接種も浸透して経口治療薬も供給され、様々なデータも蓄積されてきたはずです。ところが、依然として人流抑制が続いており、都会や地方を問わず、全国のバスなど交通事業者は本当に苦境に立たされています。

 地域の生活を支えている路線バスは、お客様がいなくても休むことができません。路線維持のため、コスト削減など必死にやっていますが、「公共」交通とは言っても、我々は民間会社、民間の努力だけでは限界があります。人流抑制の影響を受けたのは、飲食や宿泊だけでなく、交通機関が一番影響を受けているのではないかと思います。交通機関というのは、人流そのものですから。

 人流抑制とは、そもそも合理的な感染対策なのでしょうか。マスクを着用して静かに交通機関に乗ってクラスターが発生した例は、これまで聞いたことがありません。マスクを外して間近で大騒ぎすれば感染リスクはありますが、人の移動とは無関係ではありませんか。

 国や専門家の方は「人流抑制が必要」と言いますが、この場合の「人流」とはどういう意味なのでしょうか。マスクを外して大騒ぎすることと、感染対策を徹底して交通機関に乗ることを、「人流」として一括りにすることは、やめて欲しいのです。

 バスは5分で車内の空気が全て入れ替わります。毎日、消毒も小まめにやっています。交通機関として感染対策は徹底しています。バスのみならず、鉄道も飛行機も船舶も、交通機関は換気に優れています。乗客の皆様もマスクを着用して静かに乗っていただいています。

 マスクをして十分対策した上で、人には動いて欲しいのです。旅行先などでマスク着用など十分に対策をしていれば、出張や旅行など、行っても良いのではないでしょうか。地域の路線を維持するためにも、ぜひ皆様に公共交通機関を利用していただけることを切に願っています。

 人の動きを止めると経済全体が止まります。安心して公共交通で移動できる世の中に、というのを本当に切望しています。国には、ぜひ本質を捉えて、旗を振って欲しいのです。現状のまん延防止等重点措置では、人の動きが止まってしまい、飲食のみならず、交通や観光など幅広い業種が影響を受け続けています。国には、早急に、まん延防止等重点措置の内容を、合理的なものに見直していただきたいと思います。

「Go Toトラベル」については、再開する際には、できるだけ長期間続けて欲しい。交通・観光業界にとって、この2年間、本当に大きなマイナスです。Go Toトラベルの再開は「移動しても良い」という国からのメッセージになります。それが無ければ、交通・観光がこれまで受けてきた大きなマイナスは取り戻すことはできません。Go Toトラベルは細く長くで良いので、2年以上やって欲しい。

 バス業界は、安全を最優先にして参ります。厳しい状況の中でも、必要な安全投資はコストを削ることなく実行していきます。また、地球環境に配慮したサステナブルなバスを目指すと共に、スマートフォンで乗車券の購入や決済ができるMaaSの推進など、未来あるバスを目指していく考えです。

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