2022-04-06

初の「電力ひっ迫警報」発令 有事での弱さを露呈した送電網

写真はイメージ

原子力発電所の再稼働など、安定的な電源の確保が課題



 

 経済産業省は、東京電力と東北電力の管内に初となる「電力需給ひっ迫警報」を発令した。

 福島県沖の地震で一部の火力発電所が停止していることに加え、関東で降雪するなど、気温が低下し、暖房用の電力需要が急増。日差しが足りずに太陽光発電の出力も落ち込み、企業や一般家庭に節電を要請する事態となったが、大規模停電は寸前で回避された。

 逼迫の最大の要因は、東電管内に電力を送っているJERAの広野火力発電所(福島県広野町)など、6基もの火力発電所が地震の影響で停止し、供給力が低下していることにある。

 しかし、地震発生は3月16日深夜で、需給がひっ迫するまでには時間的余裕があった。経産省が東電管内の警告に踏み切ったのは21日夜。東北電管内に至っては22日で、「明らかに対応が遅れた」(自民幹部)。

 電力を融通し合うための送電網には以前から課題があった。今回、東電が受けた電力融通は最大で140万㌔㍗。このうち、中部電力以西からの融通は、送電線の容量に上限があるため60万㌔㍗にとどまった。送電網増強の必要性は東日本大震災の後から再三指摘されてきたが、「巨額のコストや10年単位の工事が必要で議論がいつも先送りされている」(電力会社幹部)。

 再生可能エネルギーの普及も事態を難しくしている。特に、日照条件に左右されやすい太陽光は発電量を予測しづらい。22日は都内でも雪が舞う悪天候で、東電管内の太陽光発電の出力は全く期待できない状態だった。23日は一転して午前の段階で1千万㌔㍗台を記録した。

 経産省は早速、有識者会議で検証を開始。警報発令や節電要請が遅れた経緯について、今夏をめどに結果をとりまとめる構えだ。ただ、復旧に1カ月かかる広野火力に加え、再開時期が見通せない発電所もあり、まずは短期的な供給力強化が急務。あわせて、原子力発電所の再稼働など、安定的な電源の確保も長期的な課題となっている。

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