2022-04-06

【ヒューリック会長・ 西浦三郎】の危機管理学オフィス賃貸に加え、介護、 学童保育に注力する理由とは

ヒューリック会長 西浦 三郎氏

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新社長には前田隆也副社長が昇格

 同社は3月23日付で、吉留学社長(旧富士銀行出身)が取締役会議長に就き、前田隆也副社長(大成建設出身)が社長に昇格する人事を発表。西浦氏は会長職を留任する。
 この社長交代について、西浦氏は「吉留がちょうど3期6年になったので、1つの区切りとしていいところなのかなと。それと不動産業のプロがようやく社長になったなあと。前田は開発をずっとやってきて、百棟開発や都市開発を推進してきました。環境問題なども絡む開発でいろいろな交渉をやってきた実績がある。やはり開発事業は自らの所でやらなくてはいけないと。そういう意味では、これから一番の中心になる仕事をやる人間です」

 前田氏は1962年3月15日生まれで、社長就任時は60歳。
東大工学部卒。大成建設からヒューリックに転じたのは2007年で、15年が経つ。土地開発業務を担当し、「よく社内のことも分かっているし、中長期の課題を解決していってほしい」(西浦氏)という評価も社長就任の背景にある。

 成長性、収益性、生産性、そして安全性─。この4つは西浦氏が社長就任以来、言い続けてきた経営のキーワード。「この4つを高いレベルでバランスさせなくてはいけない」と西浦氏は強調しながら、次のように語る。
「今も大事ですけれども、将来を見通して、どう事業を構築していくか。それはリスク管理を含めて、新規事業をどうやって切り開いていくかが大事。そういうものを全然立ち上げていないと、急に頑張ろうと思ったって、できないわけですね。特に不動産の場合には、建て替えをやるといっても、計画を立てて、線を引いて、テナントさんに出ていただくという作業も伴う。壊して作るというと、5年位は最低かかるわけですね」

 ロシアのウクライナ侵攻のような事が起きる時代。危機管理の重要性が高まる中にあって、「最低でも5年以上先の事を考えながら経営していかないと」と気持ちを引き締める西浦氏。
 ヒューリックのトップになって16年。銀行の支店が入居するビルの所有、賃貸管理から出発して、今や旧財閥系大手デベロッパーに次ぐポジションに就いた。
 いかに付加価値の高いビル開発と新規事業の開拓を進めていくか─。同社は新しいステージを迎えたと言えよう。

「最低、資格は2つ取れ」と西浦氏は社員を督励し、人材教育にも尽力してきた。
 レベルの高い経営を─。「別に資格を持っているからレベルが高いとは言いませんけれども、(不動産部門の社員約200人のうち)一級建築士が33人いますし、グループを入れれ
ば、60 人から70人います。法務部は全員弁護士ですし、プロの人材が揃っています」

 CSR(企業の社会的責任)が言われ、ESG(環境、社会、統治)やSDGsの実行が問われる時代。
 危機管理も、結局は「人」の問題に帰着する。

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本誌主幹 村田博文

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