2022-04-11

【政界】ウクライナ問題が内政・外交を直撃 追加経済対策で打開図る岸田政権

イラスト・山田紳

※2022年4月6日時点

通常国会前半戦を無風で乗り切った首相の岸田文雄にいくつも難題が立ちはだかっている。内政ではガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の発動と、年金受給者への臨時特別給付金。どちらも政府・与党内で賛否が割れており、一つ扱いを間違えばしこりが残る。新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置の全面解除も、感染再拡大のリスクを考えると大きな賭けだ。ロシアのウクライナ侵攻は日本経済にじわりと影を落とす。就任から半年、岸田の手腕が試される局面に差しかかった。

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慎重姿勢から一転

 政府が当初、慎重だったトリガー条項の凍結解除は、自民、公明、国民民主3党の幹事長会談で具体的な政治課題に格上げされた。国民民主党は、代表の玉木雄一郎が岸田から解除の確約を得たとして国会で2022年度当初予算に賛成。「約束はしていない」と否定した岸田も野党の切り崩しを重視し、検討自体は容認した。

 ガソリン税の税率は1リットル当たり28・7円だが、1970年代から25・1円が上乗せされている。ガソリンの全国平均小売価格が3カ月連続で1リットル当たり160円を超えた場合、上乗せ分の課税を停止し、価格を引き下げる仕組みがトリガー条項だ。ただ、東日本大震災の復興財源を確保するため、現在は凍結されている。

 ウクライナ情勢の緊迫化に伴う原油価格高騰に、政府はまず石油元売り会社への補助金支給で対応した。しかし、元売りへの補助金は小売価格に反映される保証がないことから、玉木は「消費者のメリットがより明確に出る」とトリガー条項にこだわった。国民民主党を警戒していた公明党も、原油価格が高止まりする中、「トリガー条項の凍結解除などさらなる対応が必要だ」(代表の山口那津男)という姿勢に転じた。

 課題は少なくない。現行制度上、灯油や重油は対象外で、解除すれば地方自治体の税収は年間約5000億円以上減るとされる。経済産業相の萩生田光一は3月15日の記者会見で「国民生活の影響を抑えるために大胆な政策を打つことは否定しないが、制度設計を含めて議論する必要がある」と指摘した。

 自公国3党の幹事長は翌16日、実務者による検討チームを設けることで合意した。メンバーは自民党が加藤勝信、公明党が伊藤渉、国民民主党が大塚耕平。各党の税制調査会に属する専門家だ。ところが、これに自民党内で異論が出た。

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