2021-01-01

缶チューハイ市場で日本コカ・コーラが躍進

店頭での価格が100円程度というのが当たり前だった缶チューハイ市場。差別化が難しく、「価格競争に陥りがち」(関係者)と言われた同市場で存在感を示すプレーヤーが現れた。

 それが清涼飲料トップの日本コカ・コーラ。同社は18年からレモンサワー専門ブランド「檸檬堂」を九州限定で発売。19年10月から全国販売に踏み切った。同社初のアルコール飲料となった檸檬堂の滑り出しは上々で、20年1月には一時出荷停止するほどになった。

 日本コカ・コーラ関係者は「果汁と炭酸を混ぜる清涼飲料のノウハウや技術が果汁とアルコールを混ぜるチューハイでも生きている」と話す。その後も檸檬堂の勢いは衰えず、出荷数量は20年1〜9月で約570万ケースを突破。当初500万ケースが年間の販売数量計画だったが、800万ケースに引き上げた。150円程度と他社商品よりも高いにもかかわらずだ。

 缶チューハイを巡っては、グレープフルーツやぶどう、桃、コーラなど様々な味を揃えるのが通例だが、コカ・コーラはあえてレモンサワーのみに絞り、販促費なども集中投下する手法をとった。そのため、製法にも工夫を凝らし、丸ごとすりおろしたレモン果汁とお酒をあらかじめ馴染ませる「前割りレモン製法」を採用。味のバリエーションも増やした。

 また、日本コカ・コーラならではの取り組みとして、缶のデザインでもチューハイではシルバーをベースにして果汁のシズル感を演出したデザインが多い中、檸檬堂は「前掛け」を模したシックなデザインを採用。後発組ならではの「エッジを効かせた取り組み」(同)で、酒離れが進む30~40代の男性や女性層に受け入れられた。

 もちろん、缶チューハイのトップブランドであるサントリーの「マイナス196℃」やキリンの「氷結」など年間4000万ケースを誇るメガブランドに追いつくには時間を要する。キリンも麹を使った高単価の缶チューハイを投入している。

 その中でもコカ・コーラは年末に檸檬堂の大型新製品を発売。「当初はお手並み拝見だったが、今は真剣に対応策を考えねばならない」(酒類メーカー首脳)。清涼飲料の巨人は酒類業界でも台風の目になりそうだ。


日本コカ・コーラ初のアルコール飲料「檸檬堂」

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