2022-04-15

【エネルギー危機の中】IHIが進める「小型原子炉」開発、日本でも採用されるか?

米ニュースケール・パワーが開発中の小型原子炉の完成予想図



 IHIがニュースケール社に出資するまでには、およそ3年の月日を要している。お互いの技術に関する対話を続けて理解を深めてきた。また緒方氏は「出資にあたっては社内に様々な意見もあったが、IHIの原子力事業へのスタンスを改めて議論し、共有できた」と振り返る。

 IHIは、原子力発電所の中核機器である格納容器では世界屈指の企業。特に格納容器内部の「圧力容器」では世界トップシェア。理論を持つニュースケール社は実際の炉を建てる部分でIHIのモノづくり、エンジニアリングの力を必要としたということ。

「もう一つ、我々がSMRに参画することを決めたのは原子力の技術、技能を維持、向上させるという目的もある」と緒方氏。東日本大震災以降、多くの原子力発電所が停止している今、その稼働や修繕を担う人材をどう維持するかは大きな課題。

「震災を経験したベテランも減ってきているし、今の中堅層にしても将来展望がないとモチベーションが上がらない」(同)

 SMRに対する厳しい見方もある。日本エネルギー経済研究所戦略研究ユニット原子力グループグループマネージャーの村上朋子氏は「安全性、経済性、建設リードタイムの短縮などのSMRの特性は、いずれも開発側の言い分であり、まだ実証されていない。誰が、どこで、どういう用途で使うかという視点がない限り、SMRが政府の補助なく自律的に普及していくことはない」と指摘する。

 日本の原子力を巡る議論は進んでいない。官民とも、非公式には再稼働を急ぐべきという意見は出るが、それが大きな議論になっていない。IHIも「革新的技術に取り組んで成長を図りたい。国内での展開は視野に入れており、少しでも早くそういう状況になることを願っている」(緒方氏)とする。

 国の方針を決めるのが先決─。ウクライナ危機は多くの国民にエネルギーの重要性を突きつけたが、そういう時に急遽原子力を動かそうと思っても、そう簡単なものではない。やはり平時から原子力を含めたエネルギーをどう確保していくかという根本論議を詰めていくことが必要だと言える。

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