2022-04-21

SBI・北尾吉孝社長に直撃!新生銀行の公的資金返済、総合金融グループとしての成長の道筋は?

北尾吉孝・SBIホールディングス社長

「我々にとって総合金融グループとして抜けているものを全て持っているのが新生銀行だった」─SBIホールディングス社長の北尾氏は新生銀行買収をこう振り返る。だが、課題は新生銀に残る公的資金3500億円。これに目処を付け、SBIグループとしていかに成長するかが問われる。20年余前に起業した時は、ある意味で孤独な戦いだったが、今は仲間の輪も広がった。それは「顧客中心主義」という普遍的考えがあったからだと話す。

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7年で大手地銀並みの資金量を誇る存在に


 ─ 北尾さんは1999年に創業して23年が経ちますが、改めて自らの生き方を振り返ってどう感じていますか。

 北尾 幸いにして、これまで創業時に思い描いた通りに歩んでこられたと思っています。神助、天助によって、今日まで無事に来ることができたのではないかと。

 もちろん、ここに来るまでにはいろいろなことがありました。例えば2008年のリーマンショックでは多くの金融機関が大きなダメージを受けましたが、我々は誰にも助けてもらうことなく、自ら何とか繁栄の道を歩んでくることができましたから、ありがたいと思っています。

 ─ 北尾さんが創業の時に基本としたことは?

 北尾 創業時の事業構築の中心には「顧客中心主義を貫く」という普遍的な考え方を据えました。特にインターネットの時代には、この顧客中心主義が極めて大事になるだろうと考えていたのです。

 そして1社、証券会社だけをつくって終わりにするのではなく、最初から組織を一つの「生態系」とし、その組織体の中で相互進化とシナジー効果を出していこうと考えました。

 さらに技術に対する絶対的な信奉です。創業時はネットの技術でしたが、その後はフィンテックの視点でブロックチェーン(分散型台帳技術)を始め、様々な技術を導入しています。今は、ブロックチェーンの技術を土台に、デジタルスペースという次の新しい世界に乗り出そうとしているところです。

 常に自己否定をしながら自己変革を遂げ、自己進化をすることができたかなと思っています。

 ─ 1人で戦い始めたところに、今は仲間の輪が広がってきたということはいえますか。

 北尾 そうですね。お陰様で我々と提携したいという企業がたくさん現れるようになりました。私は「オープンアライアンス」と表現していますが、いろいろな企業と提携しながら、ウィン・ウィンの形をつくっていきたいと思っています。

 ─ 北尾さんをここまで踏ん張らせた思いは何ですか。

 北尾 起業する時、この事業が本当に世のため、人のためになるのか、インターネットで何ができるだろうと考えました。

 例えばネット証券では価格破壊を通じて、それまで証券会社に入っていた利益を投資家に分配する。ネット銀行では、預貯金の金利を高くしていくということに取り組みましたが、これはインターネットだから可能になったことです。「顧客中心主義」といった思想とインターネット技術がうまく噛み合ったのだと思います。

 もう一つ大事に考えていたのは、証券会社はいつの時代でもマーケットに大きく左右されるという認識を持つことです。

 どんなにいい証券会社をつくっても、マーケットが悪くなると利益が大きく落ちます。一方、銀行業はストック型のビジネスですから、必ずしもマーケットに左右されるわけではありません。

 ─ マーケットに左右されない姿を目指してきたと。

 北尾 我々は最初からボラティリティ(変動性)をできるだけ少なくするように事業グループを形成してきました。ですから、証券業を核に出発しましたが、グループ内に銀行や保険会社などをつくってきました。常に考えていたのは事業を多様化して不安定な経営にならないことです。

 我々と新生銀行のアセット(資産)を合わせると17 兆円(2021年12月末)を超えました。預金量でいっても、三井住友信託銀行さんとの合弁である住信SBIネット銀行と新生銀行を合わせると、横浜銀行、千葉銀行に次ぐ規模(2021年9月時点)です。

 ただ、横浜銀行が横浜興信銀行以来、100年以上の歴史があるのに対し、我々がネット銀行をスタートしたのは2007年です。この短期間でこれだけの資産を築くことができたということには大きな意味があります。

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