2022-04-21

【ウクライナ危機】日本の食料安全保障はどうなる? 答える人 キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹 山下一仁

ウクライナではモノがあっても輸出できない



 ―― ロシアによるウクライナ侵攻で、小麦の価格が上昇するなどの影響が出てくると思うんですが、今後の日本や世界経済に与える影響をどのように受け止めていますか。

 山下 とんでもないことが起こってしまったというのが第一で、すでに食料・エネルギー共に大きな影響を受けています。

 まず、エネルギーでいくと、ロシアは石油や天然ガスの輸出国ですので、今後は更なる上昇が予想されます。これは日本だけでなく、米国など、いろいろな国に影響してきます。特にヨーロッパは天然ガスの調達をどうするか、かなり頭を悩ませています。

 また、食料では、ロシアは小麦の最大の輸出国ですし、ウクライナも第5位の輸出国ということで、両国で小麦の全輸出の3割くらいを占めています。そして、ウクライナはトウモロコシの輸出でも世界で4番目、ヒマワリの種も世界輸出の半分以上を占めている国ですから、両国から戦争で小麦やトウモロコシを輸出できないということになると、世界全体の供給量は減るので、価格水準は上昇すると思います。

 ―― 高止まりしている資源価格がさらに上昇すると。

 山下 ええ。すでに戦争の混乱で、今もウクライナからの輸出が途絶えていますよね。モノはあるけれども輸出ができない。これまでは黒海から船で輸出していて、陸路でポーランドを経由して運ぶという手もありますが、そんなに量が運べない。船で運んだ方がより多くの量を運べるし、輸送費も安い。だから、船が使えないと、モノがあっても輸出できないことになる。

 つまり、輸送の面ですでにウクライナは影響が出ていて、一方のロシアは、輸送はできるけど、これから経済制裁でロシアの主力銀行がSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除された影響がどれくらい効いてくるのか。貿易の決済が困難になるので、輸出が難しくなるだろうと思います。

 他方で、ロシアでは通貨ルーブルが暴落し、すでに生活物資の価格が高騰しています。そうなると、ロシアは国民生活の負担をできるだけ抑えるため、自給できる小麦などの穀物は輸出制限を行って、価格を低く抑えようとするでしょう。

 これまでにも、ロシアは国際的な穀物価格が高騰した際、輸出制限を行ってきました。同じ輸出国でも、所得の高い米国やカナダと違って、ロシアは所得が低いので、自由に輸出が行われると、国内での供給が減少し国際価格と同水準になるまで価格があがるので、消費者が穀物を買えなくなるからです。

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