2022-04-27

「融資だけの銀行にはならない!」 横浜銀行頭取・片岡達也の「ソリューション戦略」とは?

片岡達也・横浜銀行頭取(コンコルディア・フィナンシャルグループ次期社長)



内外経済に不透明感、外債では含み損も


 今、日本の金融業界は難しい状況に置かれている。米国のFRB(連邦準備制度理事会)は利上げ、金融引き締めに動いているのに対し、日本銀行は金融緩和姿勢を続け、長期金利の抑え込みに躍起になるなど、不安定な情勢。ただ、いずれにせよ長きにわたるゼロ金利、マイナス金利から、上昇局面に入りつつあるということ。

 その中で横浜銀行も、これまで行ってきた外国債券投資で含み損を抱える状況になっている。「確かに外債は気をつけなければいけない。前期にも一定程度の含み損を計上しているが、各金融機関が悩んでいるところだと思う。状況を見ながら、必要に応じて損出しをしていく」

 ただ、今後金利の先高感を前提とすると、「外債は別にして、貸出のうち4分の3を占める変動金利の部分にプラス効果として効いてくる」と片岡氏。

 景気の変動はリスクだ。特に足元では継続するコロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻といった不透明感が影を落とす。

 まず、コロナに対応して、これまで政府金融機関だけでなく民間金融機関も苦しむ顧客に対して「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保融資)など資金繰り支援を行ってきた。横浜銀行はそれに加えて、自行の「プロパー融資」も実行。

 その返済はこの上期から徐々に始まるが「飲食業、宿泊業など一部の業種のお客様を除いて、コロナの影響はまだ顕在化していない」(片岡氏)という。

 それ以上に今、懸念しているのはウクライナ情勢。世界的に原材料高騰やサプライチェーンの問題を引き起こしているが、コロナではそれほど影響を受けなかった建築関連、自動車部品関連に影響を及ぼす恐れがある。「ジワジワとした影響度の方が奥深いものがある」(片岡氏)

 そのため、横浜銀行の支店では顧客企業の資金繰り支援に加えて、必要に応じて業種転換やビジネスモデルの転換についてアドバイスをしている。

 この活動は、今回の中計の大きな柱につながる。それは「ソリューション・カンパニーへの転換」である。

 これまでも、横浜銀行は従来型の貸出ビジネスだけでなく、「提案型ビジネス」を進めることを打ち出していた。では、ソリューション・カンパニーとはどのような姿を描いているのか。

「言葉だけ聞くと『ソリューション・カンパニーって何だろう? 』と思われる方も多いと思う。地域金融機関にとって、お客様に課題や悩みがあった時に最初にご連絡していただけるかどうかが最も重要。我々で全て解決できなくても『横浜銀行なら何とかしてくれる』という信頼の表れであり、そこに向けて前向きに提案をし、お客様と伴走しながら進めるのがソリューションビジネス」と片岡氏。

 これまでの提案型ビジネスの中でも、少しずつだが実績が積み重なりつつある。例えば企業のMBO(経営陣による買収)の支援や、22年4月からの東京証券取引所の市場再編に関連して、企業に対して、行きたい市場に上場するためのアドバイスなどをしている。

 今後は優先株の引き受けなど、企業の資本政策を手掛けていくことも検討中。これまでとは違うリスク管理が必要になるため、その準備をしている。

 さらには世界的な「脱炭素」の流れの中、「サステナブルファイナンス」の提供なども進めていく。すでに22年3月には第1号案件として神奈川県の富士屋ホテルに対し、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業への融資である「ポジティブインパクトファイナンス」を13億円実行している。

 従来の貸出業務は基盤であるとともに、ソリューションの中の1つのメニューということになる。ただ、これまで以上に資金のニーズは多様化しており、この対応が求められている。「普通の貸出は横浜銀行だけど、少し難しい話はメガバンクということではメインバンクの役割を果たせていない。今後、幅広いメニューを揃えていくことが課題となる」

 顧客の多様なニーズに応えていくためには、行員もこれまでとは違う能力が求められるようになる。そこで行員に対しては「リスキリング」(学び直し)も進めている。

 これまで横浜銀行は他の銀行と同様、店舗の統廃合や業務プロセスの見直しによって、業務量を削減してきた。

 特に事務を担っていた人達の仕事が減ったが、研修などを進めて営業やデジタル関係、住宅ローン分野など他の職種で働けるように促す。

 他にも「タレントマネジメント」といって、個々人に5年後、10年後のキャリアを描いてもらい、本人の意思、適性に合わせて異動や研修を行う取り組みも進める。

 それによって、どんなスキルを持った人が、どのくらいいるのかを全社で把握、そのデータを経営陣が人的資源配分に生かしていく。

 また、将来の幹部候補生を選抜しての研修も実施するなど、あらゆる方面から組織力の強化に努めている。「これらの取り組みはソリューション・カンパニーになっていくために非常に重要」と片岡氏は語る。

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