アジアの代表として
岸田はインドとカンボジアの訪問を終えた際、G7サミットに向けて、記者団に「アジアの代表として状況をしっかり報告していく」と抱負を語った。インドはロシアと軍事面も含め関係が深い。それでも共同声明ではロシアの名指しを避けつつ、「深刻な懸念」を明記することに成功した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を務めるカンボジアとの共同声明では、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反との認識を共有し、武力行使の即時停止とウクライナ領土からのロシア軍撤退を求めるなど、さらに踏み込んだ。ASEANは歴史的な経緯からロシアとの関係が加盟国によってバラバラなだけに、「厳しい非難をともに表明できたのは大きな成果だった」(外務省幹部)という。
日本の隣国であるロシアの行為は「対岸の火事」ではない。沖縄・尖閣諸島や台湾への挑発、南シナ海で国際法を無視した一方的な軍事拡張を進める中国はロシアのウクライナ侵攻と極めて似た行動となっている。「アジアの代表」との岸田の言葉からは、その責任感がにじみ出ていた。
ウクライナ情勢は厳しい状況が続くとはいえ、対露制裁で欧米と足並みを揃える岸田にとって、不安はむしろ国内情勢にあるかもしれない。
以下、本誌にて