2022-04-27

【弁護士を志した理由は何ですか?】日比谷パーク法律事務所代表:久保利 英明弁護士

―― 久保利さんは1967年に東京大学法学部4年の在学中に司法試験に合格しましたね。久保利さんが弁護士を志した理由は何だったのですか。

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 久保利 日本に正義と真の民主主義をもたらせたいという思いですね。人間は不正義によりプライドや尊厳が傷つけられ、命にも関わります。だからこそ、その根本である人権を守りたいと思ったのです。皆が生きたいように生きられる国にするために弁護士を選びました。

 弁護士の中には貧困を撲滅したいという志から弁護士になった方もいらっしゃいます。私の場合は貧しい・豊かという問題よりも、組織や権力が犯す不正義が許せなかったのです。

 ―― 企業でも不祥事が相次ぎ、経営トップはもちろん、社員一人ひとりの正義感が求められる時代になっています。

 久保利 ところが、正義感のある人間が減っています。正義感を発揮すると損だという、教育のせいではないでしょうか。同調圧力に流され、みんな同じが良いことという流れができた中で、「それはおかしい」と言う人は「嫌な奴だ」と総スカンを喰う社会になりました。

 皆と同じように振る舞い、皆と同じことを同じようにやることが正しいと小学校から高校まで教育されて個性を失い、目立つことを恐れるからです。そうすると、人並みが幅をきかせ、正義感、我が道を行く強い心は養われず、基本軸がないために信念も正義も忘れて自己保身に堕してしまう。

 ―― 正義という言葉もあまり言葉が使われませんね。

 久保利 ええ。裁判官も判決文の中で「正義に反する」といった言葉を言いませんからね。アメリカの連邦最高裁判事だったR・B・ギンズバーグは「正義、正義」と言い続けました。

 ―― 久保利さんが弁護士になった頃はどうでしたか。

 久保利 むしろ、人権とか正義を言う人ばかりでした。そもそも私が弁護士になった頃は、特攻隊で生き残ったり、敗戦後もインドネシアでオランダと戦闘を続けた軍人が復員して弁護士になっていました。特に私の印象に残っているのが戸田謙先生です。

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