「部会」を3つ設置した理由 ―― 強いリーダーの登場で一気に課題が解決されるという幻想が生まれるわけですね。
茂木 ええ。そういう気持ちが強くなってくるのです。民主的な物事の進め方だと話がなかなか進まない。もっと強いリーダーによって問題を解決してもらわなければいけないという気持ちが国民の間に広がってくるのです。
―― 今回のロシアによるウクライナ侵攻もそうですね。
茂木 そういった国民感情を背景に、右翼や極右、あるいは左翼や極左の政党が登場し、勢力を広げていると。フランスやドイツ、オランダなどでもそういった傾向が見られます。日本では今のところそういう動きはありませんが、課題を放置しておけば、やはり日本の民主主義が危なくなる。そういう危機感があります。
―― 令和臨調では具体的に3つのテーマを掲げています。
茂木 はい。1つ目が「統治構造改革」です。これは政治改革が中心になると思います。21世紀臨調ではマニフェスト選挙を提案し、その前の民間政治臨調では小選挙区制の導入を提案しました。2大政党を中心に政権を競い合う形が望ましいという提案をしてきたわけですね。ただ、その政治改革の中にも積み残された問題はかなりあります。
例えば、国会の在り方や政党のガバナンス、政官関係、それから官僚の働き方改革などです。そもそも日本には政党法も存在しません。政党の在り方についても考えるべきですし、国会改革もそうです。
そういった積み残された問題について、統治構造改革の部会で提言をまとめ、なおかつ我々も一緒に汗をかいて実現できるようにしていきたい。
2つ目が「財政・社会保障」です。もともと財政規律の回復と財政再建は避けて通れない課題でした。そこにコロナ禍もあって、財政は悪化の一途を辿っています。このまま放っておいたら大変なことになります。財政を巡る様々な議論を整理していかなければなりません。
―― 社会保障の持続可能性も問われていますからね。
茂木 はい。社会保障費は歳出の中でも非常に大きなウエイトを占めています。特にこれからは高齢化で社会保障費が増えていきますから、財政と社会保障を一体的に考え、一人ひとりの状況に応じた支出と負担の実現を目指さなければなりません。
経営者、労働組合幹部、学識者などの有志が結集し、6月にも「令和国民会議(令和臨調)」が発足する(提供:日本生産性本部) ―― 残る3つ目は?
茂木 「国土構想」になります。令和臨調ではテーマごとに部会を設けるのですが、この国土構想の部会は非常に広い分野の問題を扱うことになります。その中の1つが地方の発展です。これまでも地方分権が叫ばれ、地方と中央との在り方が議論されてきました。そのときの議論は、地方分権の観点から検討されることが多かったのです。
しかし、今は人口が減少しており、なかには消滅する可能性がある市町村も出てきました。消滅は若干オーバーな表現かもしれませんが、現実に人口がどんどん減ってしまう自治体がたくさんあるわけです。
そうすると、例えば庁舎や文化会館といった施設も人口に合わせて見直していかなければならないかもしれません。地方分権という観点からだけの議論では、地方の問題解決を考えることができなくなっているわけです。
これまでのハード中心の考え方とは異なり、人口減少と高齢化という現実を直視しながら、新たな多様な生き方・働き方を軸にして国土の在り方を考え直すということです。特に先進諸国の中で、これだけ高齢化が進む国は日本が最初になります。
以下、本誌にて