2022-05-03

【夫婦二人三脚】日本語の手書き入力で現場のDXに貢献 『一太郎』開発者・MetaMoji 浮川夫妻の再挑戦

写真左から、浮川和宣・MetaMoji社長、浮川初子・MetaMoji専務


紙とペンと同じ感覚

「入力はありとあらゆるITで必要。その入力を司(つかさど)るということは、ありとあらゆるところで使われていくということです」

 和宣氏が語るように、日本語手書き入力『mazec』から始まり、リアルタイム伝搬技術を応用した会議支援システム『MetaMoji Share(メタモジ・シェアー)』、大林組と共同開発した『eYACHO(イーヤチョウ)』、『eYACHO』を他の業種・業務でも使えるようにした『GEMBANote(ゲンバノート)』など、MetaMojiの製品は様々な広がりを見せている。

 例えば、JCB。入会手続きのDXでmazecを活用している。

 紙申込の場合、記入された内容を確認しながら担当者がデータを入力していく。だが、mazecを使えば「申込者本人が書いた確認済の文字」がそのままデジタルデータとして取り込めるため誤入力も少なく、事務処理作業も効率化。カード発行までの期間を大幅に短縮している。

 タブレットを使って紙にペンで書くように入力できるので「入会時の登録はお客様自身が行い、スタッフが代わりに入力することはない」(JCB)という。

 医療現場でも重宝されている。『医療版mazec』には医療の専門用語が登録されており、長くて難しい漢字の医療用語も簡単に入力できる。医療法人社団創成会・土屋医院院長の土屋淳郎氏は「わたしの筆跡のクセも学習してくれるので、変換できずに書き直したり、誤認識されることはほとんどない」という。

 教育現場での採用も進む。

『MetaMoji ClassRoom(メタモジ・クラスルーム)』は先生の書き込みが生徒のタブレットに表示され、生徒は紙に手で書く感覚で問題に解答できるため、コロナ禍の遠隔授業で導入が一気に拡大した。

 ユニークなところでは映画の撮影現場。大ヒット映画『キングダム』の監督・佐藤信介氏は『GEMBA Note』の愛用者だ。

 ロケ地で撮った写真にカメラの画角を想定した枠線を引いたり、本番で配置する大道具を手描きで入力したり、思い付いたアイディアや変更点を入力して現場スタッフに瞬時に共有できるので、監督の意図が伝わりやすく、思い描いたシーンを撮影できるという。

 現場のDXで映画制作の生産性が向上している形だが、〝手書き〟ならではの力も発揮。

「強い要望なら大きな文字で、ちょっとした補足は小さく書く」など〝文字の表情〟によって情報の重要度を伝えられるのも監督のお気に入りポイントだそう。

 使い勝手の良さも評価されるMetaMojiの製品だが「浮川社長の要求が厳しくて、ハードウエアの限界に挑戦させられながら、それを克服して頑張ってきました」と初子氏は笑顔で話す。

「ITの利活用は、まだまだこれからだと思っています。いま見えているITは氷山の一角。ITの発展や使われ方はいまと比べものにならないくらい広がると思っています」(和宣氏)

 和宣氏は発明者であり、イノベーター。アイディアの根底には「どこでも、誰でも」という思いがあり、未来への興味関心が原動力。アイディアを具現化する初子夫人率いるエンジニアチームの支えのもと、和宣氏の挑戦は今後も続く。

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