日本語AIでGAFAに対抗「日本語の対話応答で勝ち切ることが重要」─。
上野山氏は今後の成長のカギをこう語る。
ブームともいえる状況にあったAIだが、市場は今どうなっているのか─。
上野山氏はAI市場を3層構造で捉えている。
「一番上の1層目に国を超えて存在するGAFAのようなグローバルプラットフォームプレイヤーがいて、2層目にIBMやNECのようなエンタープライズソフトウエアマーケットがあり、3層目にわれわれのような新興がいる」という構造だ。
1層目のGAFAは「汎用AI」を開発しているが、この競争に勝ち目はない。だが、2層目と3層目はコンタクトセンターや自動運転、医療AIなど「業界バーティカル(垂直)専用AI」の開発競争が起きており、PKSHAはここで勝負する。
その中で切り札になるのが〝日本語〟。
PKSHAは自社が提供するAI SaaSを「人と話し言葉で対話をし、人と共に進化するソフトウエア」と定義。例えば、企業の問い合わせセンターに連絡をするにも「キーボードで入力しなくても電話で困りごとを話せばAIが自動的に回答。そこでも対応できないものは人が解決する」という使い方だ。
AIはデータの量が競争力の源。PKSHAの対話エンジン『BEDORE』は2億回の会話を実現、既に100社以上にサービスを導入している。
さらに、PKSHAの関連会社「MNTSQ(モンテスキュー)」が長島・大野・常松法律事務所と提携して契約書の解析アルゴリズムを開発、契約データベースシステムとしてトヨタや三菱商事、コマツなどが活用するなど、会話に加え、文字ベースの様々な日本語データを解析。
この強みを活かし、「日本語データのハブになることで(GAFAなどの)グローバルプレイヤーに対抗していく」。
日本のDXにも注力する。その1つが今年5月にスタートした問い合わせ業務の知見を地銀間で相互共有する『地銀FAQプラットフォーム』。
全国に点在するFAQを集約し、日本語AIエンジンで解析、PKSHAのAI SaaSを通じて各地銀が利用できるサービスだ。
元データは京都銀行が提供。
「競争はあるが、システムなど共創領域は共にやっていきたい」とPKSHAと業務提携、プラットフォームを提供する。
この取り組みに参画する十六銀行は「地域差やサービス、事務要領による違いはあると思うが、共通部分も多い。連携可能な部分は一緒に取り組み、共通化することで地銀全体の活性化に貢献したい」と語る。
業界で共有できるプラットフォームの展開を視野に入れるPKSHAだが、すでにクレジットカード分野で実績を出している。
AIが最新のカード不正手口を学習し、不正使用を抑制するサービスで、サービス導入後、クレディセゾンのカード不正利用は業界平均値を大幅に下回る水準になった。
「ソフトウエアを個別に作るのではなく、共通で使う。SaaSというクラウドで知恵を共有し、社会実装していくべき」
AI技術の汎用化も進む中、日本のDXが遅れた要因とも言えるシステム業界の商習慣を変え、AIの社会インフラ化を進めていく。
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